アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「マジ?乙無の兄さん、もう書き終わったのかよ」

「終わりましたよ。ほら」

乙無の手には、びっしりと黒い文字で埋め尽くされた原稿用紙5枚…どころか、おまけに一枚追加されて、6枚もあった。

そんなに書いてんの?すげぇ。

文句なしじゃん。

「そんな一瞬で書けんのかよ…。凄くね?両隣の席と後ろの席の奴をカンニングしたんじゃねーの?」

「失礼な。ちゃんと自分で考えて書いてますよ」

雛堂じゃないんだから、乙無はそんな姑息なことはしないだろ。

それに、カンニングで写したとしても、この後の討論会で読まされるんだから、どうせバレる。

「別に成績評価される訳じゃないんだから、適当なことを適当に書いてれば良いんですよ」

その「適当なことを」「適当に」書くのが難しいから、俺達こんな苦しんでるんだよ。

「そんなに余裕ぶっかましてんなら、自分の分も書いてくれ!頼む!」

「何で僕が、あなたの分まで書かなきゃいけないんですか」

「良いじゃん!この際写さして!」

乙無の原稿用紙を奪おうとして、醜い争いを繰り広げる雛堂。

あーあ…。

これには、このやり取りを見ていた他のクラスメイト達も失笑。

ただ、乙無の原稿用紙を写させて欲しいと思っているのは、皆同じだと思う。

ぶっちゃけ、俺も写させて欲しいよ。

まぁ、当然そういう訳にはいかないからさ。

「…仕方ない。弁当食べながら…頑張って埋めるか」

片手に箸、片手にシャーペンの二刀流の構え。

…え?お行儀が悪い?

好きでやってんじゃねーっつの。こっちだって必死なんだよ。
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