アンハッピー・ウエディング〜後編〜
昼休みを挟んで、午後の授業が始まった。

今になって思えば、昨日は地獄みたいな一日だったけど、でも案外悪くなかったのかもなぁ。

だって、昨日の今頃は無事に走り終わって、自分の席で自習(という名の居眠り)をしていられた訳で。

馬鹿正直に登校してしまった、今日の俺達の有り様を見てみろよ。

「それではこれから、討論会を始めます」

午後になって、また新校舎の高飛車系芸術教師が戻ってきた。

得意げな顔で、討論会とやらを取り仕切っていやがる。

クラスメイト達の、恨めしげな視線も何処吹く風。

「それじゃあ一人ずつ、前に出て感想文を読んでください。誰からでも良いですよ」

…って、言われても。

誰が先陣を切りたいだろうか。

大トリも嫌だけどトップバッターも嫌だ。最初から二番目か、最後から二番目が良い。そういう生き物なんだよ俺達は。

分かるだろ?この気持ち。

「誰かいませんか?一番に発表したい人…」

いる訳ねーだろ、そんな奴。

と、皆心の中で思いながら、どうか自分が指名されませんように、と祈っていると。

そこに、救世主が現れた。

「やれやれ、全く仕方ない人間達ですね…。だったら、僕から読みましょう」

牽制し合っている俺達に呆れて、自らトップバッターを名乗り出たのは。

走るのも速い、書くのも早い、今度は発表も一番早い、何事も「早い」で有名(に、なりつつある)乙無だった。
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