アンハッピー・ウエディング〜後編〜
乙無の発表が終了した後。
今度は…二番手だな。
「次、二番目に発表したい人いませんか?」
涼しい顔の乙無が、自分の席に戻ると同時に。
高飛車系芸術教師が、そう尋ねながら教室の中を見渡した。
まだ発表を終えてない俺達は、思わずサッと先生から視線を逸らした。
先生が指名しようとする時、一斉にクラスメイトが全員下を向くのってさ。
学校生活あるあるだよな。
だって、目が合うと指名されそうじゃん?
…まぁ、指名されなくても、どうせ皆順番に発表させられるから。
嫌なことは、出来るだけ早く済ませた方が良いのかもしれないけど…。
乙無が先陣切ってくれたのは有り難いのだが、乙無の発表がいかにも、こう…妙にクオリティが高い?と言うか。評論文じみてると言うか。
ただただ感想を書き述べた俺達の感想文とは、毛色が違うから。
乙無の後に発表するの、それはそれで結構勇気が要るよな。
「お前が行けよ」「いやお前が」みたいな、視線だけの無言の応酬を何度か繰り返していると。
「…じゃあ、俺が…」
と、クラスメイトの一人が勇気を出して手を上げた。
おぉ、偉い。
心の中で、拍手を送る。
学級委員とか班長とか決める時、こうやって自分から皆のやりたくないことに立候補してくれる人って。
何だか、凄く格好良く見えるよな。
おぉ、イケメン!って思う。全然イケメンじゃなくても。
しかし今回、そのクラスメイトは確かにイケメンだった。
そいつの感想文は、ちゃんと俺達と同じような「感想文」だった。
乙無みたいな批判書、意見書じゃなくて。
要約すると、「戦争は悲惨で残酷なので、絶対やってはいけないと思いました」みたいな。テンプレート的な感想文。
そう。そういうのを待ってたんだよ。
何だか小学生みたいな感想文だが、それで良い。それが良いのだ。
この後発表する俺達のハードルを、めちゃくちゃ下げてくれた。
やっぱ英雄だよ、このクラスメイト。
お陰で、俺達も助かった。
彼が発表を終えると、俺達はもう互いに牽制し合うことはなかった。
「はい、じゃあ次に発表したい人」
高飛車系芸術教師が促すと、残りの生徒達が次々に手を上げた。
俺も含めてな。
三番目ともなると、もう緊張しない。
さっきあのクラスメイトが、ハードルを下げてくれたしな。
むしろ最後まで残って、大トリを飾る羽目になるのは避けたかった。
「…はぁ…」
そんな、人間の醜い一面を見た乙無が。
軽蔑するような視線を向けながら、やれやれとばかりに溜め息をついているのを…俺は、聞こえなかった振りをした。
うるせぇ。処世術って言うんだよ。これは。
今度は…二番手だな。
「次、二番目に発表したい人いませんか?」
涼しい顔の乙無が、自分の席に戻ると同時に。
高飛車系芸術教師が、そう尋ねながら教室の中を見渡した。
まだ発表を終えてない俺達は、思わずサッと先生から視線を逸らした。
先生が指名しようとする時、一斉にクラスメイトが全員下を向くのってさ。
学校生活あるあるだよな。
だって、目が合うと指名されそうじゃん?
…まぁ、指名されなくても、どうせ皆順番に発表させられるから。
嫌なことは、出来るだけ早く済ませた方が良いのかもしれないけど…。
乙無が先陣切ってくれたのは有り難いのだが、乙無の発表がいかにも、こう…妙にクオリティが高い?と言うか。評論文じみてると言うか。
ただただ感想を書き述べた俺達の感想文とは、毛色が違うから。
乙無の後に発表するの、それはそれで結構勇気が要るよな。
「お前が行けよ」「いやお前が」みたいな、視線だけの無言の応酬を何度か繰り返していると。
「…じゃあ、俺が…」
と、クラスメイトの一人が勇気を出して手を上げた。
おぉ、偉い。
心の中で、拍手を送る。
学級委員とか班長とか決める時、こうやって自分から皆のやりたくないことに立候補してくれる人って。
何だか、凄く格好良く見えるよな。
おぉ、イケメン!って思う。全然イケメンじゃなくても。
しかし今回、そのクラスメイトは確かにイケメンだった。
そいつの感想文は、ちゃんと俺達と同じような「感想文」だった。
乙無みたいな批判書、意見書じゃなくて。
要約すると、「戦争は悲惨で残酷なので、絶対やってはいけないと思いました」みたいな。テンプレート的な感想文。
そう。そういうのを待ってたんだよ。
何だか小学生みたいな感想文だが、それで良い。それが良いのだ。
この後発表する俺達のハードルを、めちゃくちゃ下げてくれた。
やっぱ英雄だよ、このクラスメイト。
お陰で、俺達も助かった。
彼が発表を終えると、俺達はもう互いに牽制し合うことはなかった。
「はい、じゃあ次に発表したい人」
高飛車系芸術教師が促すと、残りの生徒達が次々に手を上げた。
俺も含めてな。
三番目ともなると、もう緊張しない。
さっきあのクラスメイトが、ハードルを下げてくれたしな。
むしろ最後まで残って、大トリを飾る羽目になるのは避けたかった。
「…はぁ…」
そんな、人間の醜い一面を見た乙無が。
軽蔑するような視線を向けながら、やれやれとばかりに溜め息をついているのを…俺は、聞こえなかった振りをした。
うるせぇ。処世術って言うんだよ。これは。