アンハッピー・ウエディング〜後編〜
勇気ある乙無と、それから二番目に発表してくれたクラスメイトのお陰で。

その後、残りのクラスメイト達は、さほど緊張することなく発表を続けていった。

乙無以外の生徒の感想文は、どれも似たような感じだった。

「あのシーンが凄く残酷でー」とか、「あの悲惨なシーンが凄く心に残っててー」とか。

締め括りは、「やっぱり戦争はいけないことだと思いました」の一文がお決まりのテンプレート、みたいな。

要約すると内容はこれだけで、この内容を皆手を変え品を変え、言葉を変えてニュアンスを変えて、何度も似たようなことを繰り返していた。

原稿用紙5枚分、全部。

中には5枚にどうしても足りなくて、3〜4枚分しか書けてない生徒もいた。

充分だよ。大健闘。

5枚書いてたって、実際の中身は、原稿用紙一枚分で充分事足りると言っても過言ではない。

ひたすらずっと、似たようなことしか書いてないからさ。

しかし、責めることは出来ない。

誰だって、大抵はそうなるよなぁ。

余程戦争映画に興味、造形が深いor乙無みたいに博識でもなければ。

他の感想なんて出てこないと思うよ。普通は。

こうして上から目線で言ってるけど、俺だって似たようなものだし。

皆が皆、口を揃えたように似たような感想ばかりなので、飽きたのかつまらなかったのか。

高飛車系芸術教師は、不満そうな顔で俺達の発表を聞いていた。

悪かったな。つまんなくて。

あんたんとこの新校舎の生徒は、度々こういう授業を受けてるから、もっと気の利いた感想文を書けるんだろうけど。

俺達男子生徒にとっては、今回の討論会みたいな授業は、これが初めての経験。

初めてでこれなら、まだ及第点だろ。

ちなみに俺は、ギリギリ滑り込みと言わんばかりに、最後から二番目に発表した。

他の生徒に負けず劣らず、気の利かないつまらない感想文だったと思う。

昼休みを返上して、駆け込むようにして残り2枚を書き上げた為。

4枚目と5枚目の内容は、前半3枚分より更につまらなかったと思う。

良いだろ、別に。

肝心なのは、ちゃんと5枚分書き上げてノルマ達成したってことだ。

で、最後に発表する生徒は。

「げっ、自分最後かよ」

取り残されてしまった大トリは、何を隠そう雛堂であった。

なんだ。まぁ、うーんと。

…ドンマイ。

「最後はあなたですね。どうぞ、前に出て発表してください」

「やべぇ、緊張する…!」

「…頑張れ、雛堂」

応援してるよ。…心の中でな。

それにしても、昼休みになってもまだ全然書けてなかった雛堂だが。

あれから、ちゃんと書き上げることは出来たのだろうか?
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