アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「ちゃんと4枚も5枚も感想文書いてさ。皆の前で発表までして。超偉いよ自分ら。なぁ真珠兄さん」
必死にフォローしてくれる雛堂は、乙無にも同意を求めた。
が、乙無は。
「いや、偉いって言っても…。そういう課題ですから、それが当たり前、」
「それにほら、皆真面目にストーリーの感想書いてて偉いよ」
乙無の言葉を遮るようにして、雛堂が言った。
「自分なんてほら、あまりにストーリーがつまんな、いや、その…。…つまんなかったからさー」
やっぱりつまんなかったんじゃないかよ。
先生の前でつまんないって言うなよ。怒られるぞ。
「ついつい、舞台装置とか脚本とか、俳優の方に目が行っちゃった。その点、ちゃんとストーリーの感想を書いてて偉いよ。なぁ、悠理兄さん」
嘘だろ。そこでまた俺に同意を求めてくるのか。
いや、雛堂が折角、俺の失態をフォローしてくれたのだ。
ここは俺も、今度こそ気の利いたことを言って雛堂を手助けしなくては。
「そ、そ…そうだな。でも、そう言う雛堂の感想文も、悪くなかったと思うぞ。相当苦し紛れな感じではあったけど…」
あ、ごめん余計なこと言っちゃった。
フォロー。ここはフォローだ。
「でも、ほら…その。着眼点がな。雛堂にしても乙無にしても、他の皆とは着眼点がちがってて、そこが良いと思った。そういう意見もあるのかって…。なぁ、あんたもそう思うだろ?」
と、俺は隣に座っていたクラスメイトに同意を求めた。
このクラスメイト、乙無に続いて二番手に立候補した勇者である。
「そこで俺に振るの!?」とでも言いたそうな顔をしていたが。
「そ、そう…。そう、だな。うん、俺もそう思った!皆とは違う着眼点で、確かにそれも映画には大切な視点、だよな!」
頑張って賛同してくれていた。有り難い。
更にそのクラスメイトが、今度は別のクラスメイトに同意を求めるように、
「なぁ、そう思わないか?」
「うっ…。うん、俺もそう思うよ。着眼点が素晴らしい。なっ?」
「そ、そうだよなー。特に乙無君は普段の態度に見合わず、あっ。い、色んな歴史のこととか知ってて偉いと思う!」
「う、うん。戦争映画を観るなんて初めてだったけど、皆色んな意見があってて良いと思ったよ!」
クラスメイト全員、めちゃくちゃ戸惑ってる様子ではあったが。
何とか無理矢理、それっぽく…討論会っぽくなってきたんじゃないだろうか。
ちょっと乙無に対する本音が出てる生徒がいるけど、それはまぁ聞こえなかったことにして。
討論会って言うか…案の定、同意合戦みたいになってる気もするが。
そこも気にするな。
肝心なのは喋ってるってことだから。さっきまでのように無言でなければ、同意合戦でも何でも良い。
「…」
にこやかに話しているように見えて、いまいち話の弾まない、ぎこちない俺達の討論会を。
高飛車系芸術教師は、いかにも高飛車な立ち振る舞いで、腕組みして聞いていた。
話が弾まなくて不満なんだろうけど、初めてでこれは大健闘だろう。許せ。
…そうこうしているうちに。
今の俺達にとって、何よりの救い主である…授業終了を告げるチャイムの音が、教室に鳴り響いた。
必死にフォローしてくれる雛堂は、乙無にも同意を求めた。
が、乙無は。
「いや、偉いって言っても…。そういう課題ですから、それが当たり前、」
「それにほら、皆真面目にストーリーの感想書いてて偉いよ」
乙無の言葉を遮るようにして、雛堂が言った。
「自分なんてほら、あまりにストーリーがつまんな、いや、その…。…つまんなかったからさー」
やっぱりつまんなかったんじゃないかよ。
先生の前でつまんないって言うなよ。怒られるぞ。
「ついつい、舞台装置とか脚本とか、俳優の方に目が行っちゃった。その点、ちゃんとストーリーの感想を書いてて偉いよ。なぁ、悠理兄さん」
嘘だろ。そこでまた俺に同意を求めてくるのか。
いや、雛堂が折角、俺の失態をフォローしてくれたのだ。
ここは俺も、今度こそ気の利いたことを言って雛堂を手助けしなくては。
「そ、そ…そうだな。でも、そう言う雛堂の感想文も、悪くなかったと思うぞ。相当苦し紛れな感じではあったけど…」
あ、ごめん余計なこと言っちゃった。
フォロー。ここはフォローだ。
「でも、ほら…その。着眼点がな。雛堂にしても乙無にしても、他の皆とは着眼点がちがってて、そこが良いと思った。そういう意見もあるのかって…。なぁ、あんたもそう思うだろ?」
と、俺は隣に座っていたクラスメイトに同意を求めた。
このクラスメイト、乙無に続いて二番手に立候補した勇者である。
「そこで俺に振るの!?」とでも言いたそうな顔をしていたが。
「そ、そう…。そう、だな。うん、俺もそう思った!皆とは違う着眼点で、確かにそれも映画には大切な視点、だよな!」
頑張って賛同してくれていた。有り難い。
更にそのクラスメイトが、今度は別のクラスメイトに同意を求めるように、
「なぁ、そう思わないか?」
「うっ…。うん、俺もそう思うよ。着眼点が素晴らしい。なっ?」
「そ、そうだよなー。特に乙無君は普段の態度に見合わず、あっ。い、色んな歴史のこととか知ってて偉いと思う!」
「う、うん。戦争映画を観るなんて初めてだったけど、皆色んな意見があってて良いと思ったよ!」
クラスメイト全員、めちゃくちゃ戸惑ってる様子ではあったが。
何とか無理矢理、それっぽく…討論会っぽくなってきたんじゃないだろうか。
ちょっと乙無に対する本音が出てる生徒がいるけど、それはまぁ聞こえなかったことにして。
討論会って言うか…案の定、同意合戦みたいになってる気もするが。
そこも気にするな。
肝心なのは喋ってるってことだから。さっきまでのように無言でなければ、同意合戦でも何でも良い。
「…」
にこやかに話しているように見えて、いまいち話の弾まない、ぎこちない俺達の討論会を。
高飛車系芸術教師は、いかにも高飛車な立ち振る舞いで、腕組みして聞いていた。
話が弾まなくて不満なんだろうけど、初めてでこれは大健闘だろう。許せ。
…そうこうしているうちに。
今の俺達にとって、何よりの救い主である…授業終了を告げるチャイムの音が、教室に鳴り響いた。