アンハッピー・ウエディング〜後編〜
やっと解放された、というクラスメイトの安堵の声が聞こえてくるようだった。

心の底からホッとしたよ。俺もな。

「はい、ではそこまで。今日の討論会はこれで終わりにします」

待ち望んでいた、その一言。

「今日の」って何だよ。次回があるとでも?

もう二度となくて良い。あんたとクールビューティー体育教師は、もう二度と旧校舎に来ないでくれ。

切実にな。

「皆さん、討論会はどうでしたか?」

と、先生が聞いてきた。

口を揃えて「もう二度とやりたくないです」と言いたかったのを、必死に呑み込む。

「…本当はもう少し、身のある討論をして欲しかったですが…」

うるせぇ。

今日が初めてなんだぞ。新校舎の女子生徒と一緒にするな。

「こうして、皆で一つの作品を鑑賞して意見を述べ合い、芸術的な感性を磨くのも悪くなかったでしょう?また機会があれば、今度は別の作品を見て、討論会をしたいですね」

うるせぇ。もう二度と嫌だ。

これの何が芸術的な感性(笑)だよ。

「それでは、これで授業を終わります。お疲れ様でした」

と言って、高飛車系芸術教師は教室を出ていった。

…クラスメイト全員の、深い深い溜め息が聞こえてくるようだった。

…昨日と言い今日と言い、長い一日だったよ。

良かったことと言えば、お陰で寿々花さんのことを考えずに済んだという点。これだけだ。

それなのに授業が終わった途端、また考えてしまったよ。

俺達が謎の討論会に苦しめられていた頃、寿々花さん、イタリアで何をして過ごしてるんだろうなぁ…って。
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