アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…約二時間後。

我が家のテーブルの上では、たこ焼きがジュージューと音を立てていた。

初めての割には…結構それっぽくなってるんじゃないか?

レシピ、わざわざネットで調べなくても。

たこ焼き器に付属してたよ。美味しいたこ焼きの作り方、って。

すり下ろした山芋を生地に混ぜるのがコツなんだってさ。

油をしっかり塗って、初めてでも焦がさずに出来た。

かつお節とソースと青のり、マヨネーズをかけて、完成。

おぉ、めっちゃそれっぽい。

「わー、わー。たこ焼き屋さんだー」

これには、寿々花さんもハイテンション。

発案者ではない俺も、思わず自画自賛したくなる出来。

やれば出来るもんだな。

暑い中、わざわざホームセンターにたこ焼き器を買いに行った甲斐があるというものだ。

「まだまだたくさんあるからな。好きなだけ食べて良いぞ」

「わーい。やったー…」

と言って、割り箸を割ってたこ焼きを食べ…ようとしたが。

寿々花さんは、何かに気づいたようにピタッと制止した。

…どうした?

「…悠理君。私、今大変なことに気づいちゃった」

「な、何だよ?」

珍しく真剣な顔して。一体何に気づいっ…、

「…私、たこ食べられないんだった」

「…それ、焼く前に気づけよ」

アホの子なのか。あんたは。

たこ嫌いな癖に、たこ焼きパーティーやりたいと言い出したのか。

意味不明なんだが?

「どうしよう…。美味しそうなのに、たこが入ってなかったら凄く美味しそうなのに…!食べられないや」

たこの入ってないたこ焼きなんて、そりゃもう焼きだ。ただの焼き。

「もっと早く言えよ…!たこ抜きで作ったのに」

「だって、気づかなかったんだもん」

半泣きの寿々花お嬢さん。

「分かった、分かったから。泣かなくて良いから」

「でも、これどうしよう。悠理君、折角いっぱい作ってくれたのに」

…どうしような。マジで。

俺が一人で食べるか…?でも、まだまだたくさん余ってるんだよな。たこ…。

結構大きめの茹でダコ買ってきちゃったんだわ。

そうと知っていれば、たこ抜きで焼いたのに…。

…こうなったら。

「大丈夫だ、寿々花さん。こんな時は…頼れる助っ人を呼ぶから」

「…すけっと?」

言わなくても、誰のことか分かるな?

前回、寿々花さんが俺の誕生日に、超巨大な三段ケーキを用意してくれた。

あのときも、大量に余ったケーキを平らげるのを手伝ってくれたあの二人を、この場に呼ぶことにしよう。
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