アンハッピー・ウエディング〜後編〜
一般的にカレーを作るときは、市販のカレールーを使用すると思うんだよ。

中には、カレー粉とスパイスを自分で調合して、本格的なカレーを作る人もいると思うけど…。

俺は、そこまで本格的なカレーを作ったことはない。

だって、その為にわざわざスパイスを買うの、勿体ない気がして。

使うスパイスの割合だって、分からないしな。

それなら、雑に突っ込むだけで安定して美味しい、市販のカレールーを使う方が良いかと思って。

辛口、中辛、甘口と色々売ってるが。

俺自身は中辛〜辛口が好みだが、うちは子供舌の寿々花さんがいるからな。

最近は、常に甘口を購入している。

果たして寿々花さんに、そのような辛味の見分けがつくだろうか。

…しかし、うちの寿々花さんはそれどころじゃなかった。

「…何処に売ってるんだろう…?」

そもそも、カレー粉売り場の場所が分からない。

野菜売り場は大抵、スーパーの入口付近にあって。

そのまま真っすぐ進めば、精肉コーナー、鮮魚コーナーと並んでいるから分かりやすいが。

カレー粉などのレトルト食品は、店によって置き場所が違うから、初めて来るスーパーだと探すのが大変だったりする。

分かるよ。俺だって行き慣れないスーパーに行くと、欲しい物を探すのに苦労するもん。

行きつけのスーパーだったら、あれはあの辺に、これはこの辺に…って、案内されなくても分かるんだけどな。

買い物初心者の寿々花さんには、到底分からない。

しばらく、売り場を行ったり来たりしていたが…。

乾物コーナーだったりお菓子コーナーだったり、いまいち見当外れの場所ばかりうろうろしている。

もうちょい右だ、寿々花さん。今いる位置から右に2列歩けば、そこにレトルトカレーやカレー粉が売ってるコーナーがある。

頑張ってそこまで歩くんだ。

はらはらしながら、俺は不安そうにカレー粉を探す寿々花さんを見守った。

このときの俺は、やっぱり、相当怪しい不審者に見えてたことだろう。

しかし、寿々花さんを見守るのに必死で、そんなことはまるで気づかなかった。
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