アンハッピー・ウエディング〜後編〜
どうすりゃ良いんだ?ヤギ肉なんて。

こんなに匂いのキツい肉、どうやって調理すれば良いんだよ。

シンプルにステーキ…にしても、多分匂いがキツ過ぎて食べられないだろうな。

…おまけに。

「うぎゃっ、くせぇ!真珠兄さん、これ何?」

冷蔵庫の中から、また異臭を発する食べ物を発見。

この匂い、その見た目は…。

「見ての通り、チーズですね。ブルーチーズの一種…ゴルゴンゾーラチーズですね」

さすがに、ゴルゴンゾーラチーズは聞いたことあるぞ。

カビの生えたチーズなんだろ?高級チーズだ。

貧乏舌の俺は、当然食べたことないけどな。

俺にとってチーズと言えば、スライスチーズか、●印の6ピースチーズだけだ。

カビの生えたチーズなんて、食べても大丈夫なんだろうかと心配になるが…。

匂いのキツいヤギ肉に、同じく匂いのキツいゴルゴンゾーラチーズ…。

一体どうやって組み合わせたら良いんだよ。それ、もうとんでもない匂いにならないか?

まだビニール袋に包まれた状態なのに、既に周囲に異質な匂いが広がっている。

包装を解いたら、一体どんな恐ろしい匂いがするのか。

更にここから加熱・調理したら、もっと恐ろしいことになりそう。

誰か一人くらいこの中で、ヤギ肉やゴルゴンゾーラチーズを食べつけているような。

リッチな舌をお持ちのクラスメイトがいてくれたら、随分助かるんだが。

「お客様の中に、ヤギ肉に詳しい方はいらっしゃいませんか!」と聞きたい気分。

どんなシチュエーションだよ、って感じだが…。こんなシチュエーションだよ。

しかし。

「…」

「…」

そこらのスーパーでは滅多にお目にかかれない、匂いのキツいヤギ肉や外国の野菜、チーズを前に。

クラスメイト達は誰もがお互いに無言で、不安そうな顔をしていた。

…この顔を見るに、リッチな舌をお持ちの方はいらっしゃらないようだな。

駄目か…。まぁ、そりゃそうだよな…。

精々、ライ麦パンくらいなら、齧ったことがあるクラスメイトもいるかもしれない。

「畜生、まともな食材の一つもないのかよ」

と言いながら、雛堂は冷蔵庫の奥に手を伸ばした。

「…おっ、缶詰めがあるぞ。缶詰めなら当たりじゃね?」

缶詰め?

それは良い。ちょっと希望が見えてきた。

俺もよく使うよ。缶詰めは。

ツナ缶か?サバ缶か?それともパイン缶とか。

しかし、雛堂が片手に掴んでいた、その缶詰めには。

俺には読めない、外国の文字のラベルが貼ってあった。

…不穏な気配。
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