アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「…乙無。その缶詰めは何だ?」

「それは…ムール貝の缶詰めですね」

ムール貝だってよ。

残念ながら、俺はそんなお洒落な貝は食べたことない。

アサリかハマグリが良いところだよ。俺が食べられる貝なんて。

「それから、そこの奥にあるのは…」

「うわキモっ!エイリアンの頭かよ!?」

エイリアンの頭って何だよ、と思って冷蔵庫を覗いてみたら。

成程、言われてみれば…エイリアン並みに気持ち悪い食材が入っていた。

「エイリアンではなく、モレルマッシュルームです。キノコですよ」

「キノコ!?これが?この間観たエイリアン映画に、似たようなのが出てきたぞ」

それは、もしかしたらこのキノコだったのかもしれない。

それ、本当にキノコ?

「毒キノコなんじゃねぇの…?」

「普通に食べられますよ。外国では一般的です」

「…ふーん…」

悪いけど、どんなに高級な外国産のキノコでも。

俺にとっては、シメジとシイタケの方が親しみが持てるから。

そして、極めつけは。

「あ、瓶詰めがある」

冷蔵庫の一番奥から、これまでで一番怪しげな瓶詰めの食材が出てきた。

瓶詰めの食べ物と言えば、ジャムや鮭フレークが思い浮かぶが…。

勿論、この食材ラインナップの中に、美味しい鮭フレークが混じっているはずがない。

見てみろ。また外国語のラベルが貼ってある。

今度は何だよ。アンチョビとか?

「食材博士、これは何だ?」

「誰が食材博士ですか。…どれどれ」

乙無は、瓶詰めのラベルをじっと眺め。

「へぇ、これは珍しい。カルチョーフィですね」

アンチョビじゃなかった。残念。

…って、かるちょふぃ?

何だ、それ?

とうとう、全く原材料も何も分からない食材が出てきた。

海のものなのか山のものなのか、肉なのか植物なのかも分からないけど、これだけは分かる。

多分、俺の行きつけのスーパーの店員さんに「カルチョーフィください」って言っても、絶対手に入らないだろうってことだけは。

ねーよ。

あの先生、スーパーで買ってきた、って言ってたよな?

一体何処のスーパーで買ってきたのか、ちょっと紹介してくれ。

絶対、ここら辺の近所のスーパーじゃない。

あの天真爛漫系家庭科教師、もしかして海外にでも住んでんの?

と、疑いたくなるような食材ラインナップだった。
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