アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「す…寿々花さん、か?」
この間の抜けた呑気な声は、間違いない。
またしても、イタリアからの国際電話である。
…しかし。
『…あれ?もしもし。もしもーし。ぷろんとー』
向こうに音声が届いていないのか、寿々花さんは必死に呼びかけ続けていた。
…ぷろんとって何?もしもしみたいな意味?
『おかしいな。悠理君が出ない…。この時間なら家にいるかなーと思ったのに。家出かな…?』
家出じゃない、家出じゃないって。
何で家主がいないのに家出をするんだよ。
あと、電話出てるって。繋がってる、ちゃんと通じてるよ。
「もしもし、寿々花さん?ちゃんと繋がってるよ」
『おかしいなー。悠理君、今忙しいのかな…。…はっ。もしかして、私とはお喋りしたくないってこと…?』
「ちょ、違う、馬鹿。そんな訳ないだろ!」
『…そっかー…。寂しいなー…』
電話の向こうで、しょぼーんとしている寿々花さんの顔が目に浮かび。
このポンコツ電話、ぶっ叩いてやろうかと思った。
「通じてるから。今ちゃんと聞こえてるから!」
『旅行のお土産に、パスタソースとカルチョーフィ、どっちが良いか聞こうと思ったのになー』
「またそれかよ!パスタソース!頼むからパスタソースにしてくれ!」
流行ってんのかカルチョーフィ。なぁ?
もう良いって、イタリアの食材は。俺には扱えない。
いや、俺の料理の腕が足りてないせいなんだけども。
それより電話。このポンコツ電話、いい加減一方通行じゃなくて、俺の声も向こうに届けてくれよ。
『あっ、もしかして私、また違うところにお電話しちゃったのかな?』
「合ってる。ちゃんと合ってるよ、大丈夫だから!」
『寂しかったから、悠理君の声が聞きたかったのになー…。駄目だったのかー』
「こんの、ポンコツ電話!いい加減つ、う、じ、ろ、っての!」
腹立ち紛れに、電話機の本体をベシッ、とぶっ叩いた。
すると。
『…あれ?今悠理君の声が聞こえたような…?』
「え、まさか今ので直ったのか?」
『あ、悠理君の声だ。やったー、通じた』
壊れた家電、叩けば直る理論。
あれはあながち、都市伝説ではなかったらしい。
この間の抜けた呑気な声は、間違いない。
またしても、イタリアからの国際電話である。
…しかし。
『…あれ?もしもし。もしもーし。ぷろんとー』
向こうに音声が届いていないのか、寿々花さんは必死に呼びかけ続けていた。
…ぷろんとって何?もしもしみたいな意味?
『おかしいな。悠理君が出ない…。この時間なら家にいるかなーと思ったのに。家出かな…?』
家出じゃない、家出じゃないって。
何で家主がいないのに家出をするんだよ。
あと、電話出てるって。繋がってる、ちゃんと通じてるよ。
「もしもし、寿々花さん?ちゃんと繋がってるよ」
『おかしいなー。悠理君、今忙しいのかな…。…はっ。もしかして、私とはお喋りしたくないってこと…?』
「ちょ、違う、馬鹿。そんな訳ないだろ!」
『…そっかー…。寂しいなー…』
電話の向こうで、しょぼーんとしている寿々花さんの顔が目に浮かび。
このポンコツ電話、ぶっ叩いてやろうかと思った。
「通じてるから。今ちゃんと聞こえてるから!」
『旅行のお土産に、パスタソースとカルチョーフィ、どっちが良いか聞こうと思ったのになー』
「またそれかよ!パスタソース!頼むからパスタソースにしてくれ!」
流行ってんのかカルチョーフィ。なぁ?
もう良いって、イタリアの食材は。俺には扱えない。
いや、俺の料理の腕が足りてないせいなんだけども。
それより電話。このポンコツ電話、いい加減一方通行じゃなくて、俺の声も向こうに届けてくれよ。
『あっ、もしかして私、また違うところにお電話しちゃったのかな?』
「合ってる。ちゃんと合ってるよ、大丈夫だから!」
『寂しかったから、悠理君の声が聞きたかったのになー…。駄目だったのかー』
「こんの、ポンコツ電話!いい加減つ、う、じ、ろ、っての!」
腹立ち紛れに、電話機の本体をベシッ、とぶっ叩いた。
すると。
『…あれ?今悠理君の声が聞こえたような…?』
「え、まさか今ので直ったのか?」
『あ、悠理君の声だ。やったー、通じた』
壊れた家電、叩けば直る理論。
あれはあながち、都市伝説ではなかったらしい。