アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「そうなんだよ…。俺の静かな毎日も、今日で終わりだな」

「またまたー。そんなこと言って、帰ってくるの嬉しい癖に」

べ、別に嬉しい訳じゃ。

「彼女が日本に戻ってきたら、いよいよハロウィンパーティーですね」

と、乙無。

そうだった。寿々花さん、楽しみにしてるんだろうから。

忘れちゃならないよなぁ。

「いっそ、日曜にやっちゃう?無月院の姉さんが帰った次の日に」

「次の日は、さすがに休ませてあげた方が良いんじゃないですか?時差ボケもあるでしょうし」

「あ、そっか時差ボケかー。自分はなったことないけど、大変なんだろうな」

大丈夫だ、雛堂。俺もなったことはない。

そもそも、日本と時差のある場所に行ったことがない。

寿々花さんって…時差ボケとかするタイプなんだろうか。

いずれにしても、やっぱり帰ってきた翌日くらいは、ゆっくりさせてやってくれ。

荷物の片付けとか洗濯とか、やらなきゃいけないことも山積みだしな。

「じゃ、ハロウィンパーティーは来週だな。期待しててくれよなー」

「はいはい…」

俺も、ハロウィンパーティーの為にかぼちゃのケーキを…。

…ってその前に、明日帰ってくる寿々花さんの為に。

約束通り、特大のオムライスを作っておかないとな。

勿論、日の丸国旗を立ててな。

やれやれ、明日からまた家の中が賑やかになりそうだ。

「…見てみろよ、真珠兄さん。悠理兄さんが、ここ一週間で一番嬉しそうな顔してる」

「寿々花さんが帰ってくるのが、余程嬉しいんでしょうね」

「けっ。リア充共めがよー。爆発してくんねーかなー」

雛堂と乙無が、俺を指差して小声でひそひそ言っていたが。

その時の俺には、眼中になかった。

我ながら、柄にもなく…浮かれていた、ということなのだろう。
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