アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…しかし。

「…帰ってこないな…」

俺は、リビングの壁時計を見上げて呟いた。

今日、この数時間だけで何度時計を見たことか。

5分おき…どころか、1分おきに時計を見ているような気がする。

時計の針は、ゆっくりゆっくり、カチコチと動いていた。

正確に「○時に帰る」とは聞いていないが。

「午後に帰る」とは言ってたよな?

現在の時刻は、午後4時過ぎである。

そろそろ帰ってきてもおかしくない…と思うんだけどな。

帰ってきてすぐに食べられるように、特大オムライスの準備は既にしてある。

オムライスに、唐揚げとフライドポテトと、ミニハンバーグとナポリタンを添えた、豪華お子様ランチである。 

デザートに、プリンとアイスクリームまで用意してあるのに。

寿々花さんが帰ってこないんじゃ、意味がない。

「…」

また、俺は無意識に時計を見上げていた。

そして、立ち上がって窓の傍に向かい。

窓の外を伺って、寿々花さんの姿が見えないか、その場でじーっと見ていた。

…が、いつまで経っても気配さえない。

…帰ってこないんだけど。大丈夫か?

飛行機が遅れてる、とか?

それとも、空港から真っ直ぐ学校に帰って、全員集まって最後の挨拶をしてる、とか?

いやいや。そういうのは後回しで良いからさ。

日本に帰ってきたら、真っ直ぐ帰宅させてくれよ。なぁ?

家に帰るまでが遠足だって言うだろ。

まぁ…遠足じゃなくて、修学旅行なんだが…。似たようなもんだ。

もしかして、天気が悪くて飛行機が着陸出来ない、とか?そういうことはないだろうか。

こっちは晴天なんだが…。

向こうの天気はどうなんだろう、とテレビをつけてみたところ。

またしても、何処の放送局でも超下らないバラエティ番組か、全く興味のないスポーツの中継ばっかりで。

肝心の天気予報、全然やってない。

あるあるだよな。天気予報を見たくてテレビを付けるのに、こういう時に限ってどの局も天気予報やってない。

畜生。この役立たずテレビめ。嫌がらせかよ。

俺は、腹立ち紛れにテレビをブチッ、と切ってやった。

こうなったらスマホだ。スマホで天気を確認しよう。

スマホのニュースだけは、いつでも俺を裏切らない。

見てみたところ、特に天候が悪いということはなさそうだった。

まぁ、寿々花さんだからな。雨男の雛堂と一緒にしちゃあいけない。

天気が悪い訳でもないのに、じゃあ何で、こんなに帰ってくるのが遅いんだ…?

それとも、予定通りなのか?元々夕方〜夜に帰ってくるつもりだったのか?

「午後」って言ってたもんな。午後の範囲って結構広いぞ。当たり前だけど。

いつ帰ってくるのやら…。

いつ帰ってくるにしても、起きて待ってるつもりだけど…。

でも、気になって何も手につかないから、早く帰ってきてくれないか。

こういう時、寿々花さんがスマホを持ってたらなぁ…。

すぐに連絡して、いつ頃帰るか聞けるのに。

その時、突然俺のスマホが鳴った。

ハッとして、飛びつくようにスマホを手に取ったが…。
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