アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それからの二時間弱は、まさに地獄だった。

この映画、前にも寿々花さんに付き合わされて、一度観たことがあるけど。

何回観てもヤバ過ぎだろ。

冷や汗が止まりません。

今日が本当のハロウィンの日じゃなくて良かった。

本当のハロウィンの夜にこんなもの観たら、朝まで寝れねーよ。

二回目でさえ、これなんだぞ。

この映画を初めて観た乙無は、邪神の眷属を自称していても、さすがにビビってるんじゃないかと思ったが。

「あれ?これで終わりですか」

「…どうだ?初めての『円環』は」

「別に大したことありませんね。悠理さんが何にそんなに怯えてるのか、僕にはさっぱり分かりません」

マジかよ。

全力で強がってるんだろ。そういうことだな?

大したことないとか言いながら、今夜は電気つけっぱなしで寝るんだろ。きっとそう。

全力で強がってるだけだ。

「僕に言わせれば、幽霊や化け物なんて恐るるに足りません。生きている人間の方が、余程恐ろしい化け物ですよ」

はいはい、強がり強がり。

「面白かったねー、悠理君。何回観ても面白いね、これ」

と、目をキラキラさせている寿々花さん。

これを観て「面白い」という感想が出てくるとは。

さすがとしか言いようがない。

「やっぱり名作だなー。何回観ても飽きねぇや」

雛堂も満足そうだし。

何?過剰にビビってるのって、俺だけ?

いやいや、こいつらが揃いも揃って心臓に剛毛が生えてるだけだよ。

俺は普通。俺は正常だから。

だって当然だろ。考えてみろよ。テレビの画面から出てくるんだぜ?

そんなのビビらない奴の方がおかしいんだよ。 

俺以外全員おかしいってことで。よろしく。
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