アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「…さすがに映画を一本観ると、もう結構良い時間ですね」

壁時計をちらりと見上げて、乙無が言った。

…そうだな。

映画一本観るだけで、ほぼ二時間だもんな。

名残惜しい気もするが、そろそろハロウィンパーティーもお開きだ。

「もう終わっちゃうのか。残念だなー…」

ちょっとしょぼん、とする寿々花さん。

まぁまぁ。楽しかったんなら良かったじゃないか。

「それなら、来年もやろうぜ。来年もハロウィンは…」

「でも、来年は今度は悠理君達が修学旅行でしょ?」

そういえば。

来年、俺達男子部の修学旅行もこの時期なのだろうか。

それはまだ分からないけど…。

「大丈夫だって。どうせ男子部の修学旅行は国内旅行、精々一泊二日、長くても二泊三日程度だからさ」

聖青薔薇学園のこと。

男子部の修学旅行なんて、どうせ近場で数日だよ。

どうせ俺はパスポート持ってないし、外国語なんて喋れないし。

国内旅行万歳。

「それに、もしハロウィンに被ってたとしても…。関係ないだろ?今年みたいに、帰ってきてからやれば良いんだよ」

「本当?またハロウィンパーティーしてくれる?ケーキを焼いたり、お菓子を食べたり、赤ずきんちゃんの服を着てくれる?」

「…赤ずきんちゃんの服は着ないけど、ケーキとお菓子は約束するよ」

正直、もう二度と仮装は嫌だ。

あとホラー映画も嫌だ。

来年はもっと…仮装するにしても、衣装は自分で用意しよう。

そして、もっと平和で怖くないパーティーゲームを企画しておこう。

「雛堂と乙無も、付き合ってくれるよな?」

と、俺は二人に声かけた。

すると。

「そりゃあもう。こんな美味しいケーキのご相伴に預かれるなら、来年も再来年もお邪魔したいね」

「僕は多忙の身ですから、来年の約束はまだ出来ませんけどね。僕には邪神イングレア様の使命を果たす為に…、」

「ほら。雛堂も乙無も付き合ってくれるって。良かったな、寿々花さん」

「わーい。ありがとう」

「ちょっと悠理さん。僕は付き合うなんて言ってませんよ」

うるせぇ。実質「来年も暇です」って言ってたようなもんだろ。

付き合ってもらうぞ、来年も再来年も。

…寿々花さんの笑顔の為にな。
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