アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「クリスマスまでのカレンダーなんだよ。毎日、一つずつ窓を開けていくの」

「あー…。はいはい、成程…」

思い出した。

外国の文化だっけ。12月に入ったら、クリスマスまでの日数をカウントダウンするカレンダー。

毎日一つずつカレンダーの小窓を開けながら、クリスマスの訪れを指折り数えて待つんだよな。

日本でも、少しずつ広まりつつある文化である。

寿々花さんじゃないけど…もういくつ寝るとお正月、のクリスマスバージョンだな。

「へぇ…。聞いたことはあるけど、実物は初めて見たよ。寿々花さんにしてはお洒落なもの持ってんな」

「椿姫お姉様が送ってくれたんだー。悠理君と楽しんでねって」

あぁ成程、そういうことだったか。

ってことは、さっき椿姫お嬢さんから送られてきた荷物の中身って、これだったのか。

道理で。寿々花さんの趣味にしてはハイカラ過ぎると思った。

「そうか…。良かったな、面白いもの送ってもらって」

「うん!これから毎日、悠理君と一緒に開けて良い?」

「良いよ」

「やったー」

全く。干し柿で喜んだかと思えば、アドベンドカレンダーで喜び。

忙しいお嬢様である。

「じゃあ、早速一個目を開けて良い?」

「あぁ、どうぞ」

「一緒に開けよう。悠理君も一緒に、せーのって」

俺も一緒にやるのか?

そんな大袈裟なことしなくても…と思ったけど。

うっきうきの表情の寿々花さんを見ていると、嫌とは言えず。

あんたって人は、その無邪気な顔。

とても年上とは思えない。幼稚園児と見紛うほどである。

…はいはい、分かったよ。

「分かった。じゃあ、せーの…」

「せーのっ」

記念すべき一日目は、可愛らしい雪だるまのキャンディーであった。

これには、寿々花さんも大喜び。

やれやれ。明日から毎日、これを開けるのが日課になりそうだ。
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