アンハッピー・ウエディング〜後編〜
そんな調子で、アドベンドカレンダーを毎日開け始めて、早五日目。

寿々花さんは飽きることなく、毎日俺と一緒にカレンダーの小窓を開けていた。

…それにしても。

アドベンドカレンダーなんて、俺も初めて見たけど。

「見て見て、悠理君。今日はサンタさんのシールだよー」

「おー…。良かったな」

キャンディーやチョコレートやマシュマロや、お菓子だけが入っているのかと思いきや。

今日みたいに、可愛らしい小さなシールが入っていることもある。

面白いな。お菓子だけじゃないんだ。

日によって毎日違う、色んなものが入っていて。

每日飽きることなく、「今日は何かな?」とわくわくさせてくれるのが魅力的。

「シール、早速貼ろーっと」

「あ、こら。家具に…」

アドベンドカレンダーを置いているサイドテーブルに、ペタッ、とサンタのシールを貼り付けていた。

それ、一回貼ると剥がれないんだよ。

…まぁ良いか。寿々花さんの家だし。寿々花さんの家具だし。

好きなところに貼ってくれ。

「明日の中身は何かな?早く開けたいなー」

「おいおい…。クリスマスが待ち切れない子供かよ」

「あ、そっか…。クリスマスが来たら、アドベンドカレンダー終わっちゃうのか…」

…今気づいたのか?

そう、それはクリスマスまでのカウントダウンだからな。

クリスマスが来たら、当然アドベンドカレンダーは終わりである。

「クリスマスなんて関係なく、毎日あれば良いのに…」

気持ちは分かるが、それだともうアドベンドカレンダーではない。

「クリスマス当日より、アドベンドカレンダーを開けてる間の方が楽しいなんて…。変わってんなぁ、寿々花さんは…」

「だって…。クリスマスが楽しかったことなんて、これまで一度もなかったんだもん」

…何?

「むしろ12月はね、ずっと嫌いだったから…」

「…どういうことだ?」

「…あっ、ううん。何でもない」

自分の失言に気づいたようだが、もう遅いぞ。

一度口からポロッと出てしまった言葉は、引っ込みがつかないぞ。

非常に興味があるので、洗いざらいしゃべってもらおうか。

「そこで黙るなよ。最後まで言えよ」

「別に、何でも…」

「良いから。詳しく聞かせてもらおうか?」

恨むなら、うっかり口を滑らせた数分前の自分を恨むんだな。

「…それは、えぇっと…」

何と言ったら良いものか、と寿々花さんはしばしぐるぐると視線を彷徨わせ。

そして、こう聞いてきた。

「…悠理君って、サンタさん、何歳まで信じてた?」

唐突な質問。

えぇっと…サンタクロース?

何歳まで信じてたっけな…。俺…。

「俺は割と長かったような…。馬鹿だったからな。小学校…1、2年生くらいまでは信じてたような気がする」

我ながら無邪気なガキだよ。

まぁ、こればかりは個人差があると思う。

幼稚園くらいで既に信じてない子もいるだろうし。

俺みたいに、小学校に入ってもまだ信じてた子もいるだろう。

親が子供にサンタの存在を信じさせようとするか否か、も重要なポイントだよな。
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