アンハッピー・ウエディング〜後編〜
その点うちは、俺が「サンタってやっぱりいないの?」と言い出すまで、母さんは律儀に付き合ってくれたな。

3年生くらいになって、さすがにおかしいと思い始めたんだよ。

というのも、それまでは毎年母さんと一緒に、「サンタさんにお手紙を書く」ということをしていたのだが。

ほら、プレゼントのリクエストにさ。「サンタさんへ 今年は〇〇が欲しいです。よろしくおねがいします。」って。

毎年手紙に書いたプレゼントが枕元に置いてあったから、馬鹿な俺は無邪気にサンタクロースの存在を信じてたんだが。

あれは母さんの策略だったんだろうな。

一緒に手紙を書く振りをしながら、その時に、俺が何を欲しがってるのか調査していたんだろう。

でも3年生の時初めて、サンタに手紙を書くというお決まり行事を忘れて。

それなのにクリスマスの翌日、ちゃんと俺の欲しい物が枕元に置いてあって。

まぁ、全部母さんのお陰なんだけど。

馬鹿だった俺は、「あれ?手紙書いてないのにサンタさんが来てる?」→「もしかして、手紙なんて必要ない?」→「…サンタさんって、もしかして実在しない…?」という、連想ゲームみたいなノリで。

試しに母さんに聞いてみたら、潮時とばかりに優しくネタバラしされた。

サンタが実在しないという事実を知ったショックより、毎年母さんが俺の為に、サンタクロースしててくれたのかーって。

その感謝と喜びの方が大きくて、それほどショックは受けなかったと記憶している。

ちなみに、サンタクロースが実在しないと知った3年生以降も、毎年クリスマスプレゼントはもらってた。

…という、星見家のサンタクロース事情はどうでも良いんだよ。
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