アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「俺は割と…馬鹿だったから、小学校3年生くらいまでは信じてたな…」

「そうなんだ。…悠理君のお母さん、優しいもんね。悠理君の為にサンタクロースになってくれたんだね」

「うん。そうだと思う…」

片親でも惨めな思いをさせないように、寂しい思いをさせないようにと一生懸命育ててくれた。

だからこそ、その恩に報いる為に、俺はこの家に来ることを受け入れたのだ。

最初は…それだけの為だったんだけどな。母に報いる為に…。

「…寿々花さんは?何歳まで信じてた?」

寿々花さんは、高校生になった今でも、頭の中身は幼稚園児並みだからな。

結構最近まで信じて、

「信じたことなんてないよ。…サンタさんなんて、私のところに来てくれたことは一度もなかったから」

「…!」

…そう、だった。

この家に来るまで…無月院本家の家にいた頃はずっと…寿々花さんは。

優秀な椿姫お嬢様と違って、誰からも見捨てられ、隠され、疎まれるようにして生きてきた…。

「12月は、ずっと嫌いだった…。クラスメイトが皆、サンタさんにクリスマスプレゼントを頼んだって話をするから」

「…」

「いくらお願いしても、私のところにサンタさんなんて、一度も来てくれたことなくて…」

…無月院本家の大人達に、声を大にして言いたい。

小さい子供相手に、サンタくらい無邪気に信じさせてやれよ、って。

可哀想過ぎるだろう。生まれてこの方、一度もクリスマスプレゼントをもらったことがないなんて。

誕生日の時も、同じようなことを思ったけど…。

そうか。クリスマスもだったのか。

そりゃ誕生日がアレなんだから、クリスマスのお祝いなんて、人並みにやるはずがない。

くそったれ。嫌なことを聞いてしまった。

聞けば聞くほど、無月院本家の連中に腹が立つ。
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