アンハッピー・ウエディング〜後編〜
その週の週末、俺は早速デパートに買い物に行った。

電車とバスを乗り継いで、大きなデパートまで買いに行った。

クリスマスツリーくらい、ホームセンターでも買えるけど。

折角だから、ちょっとお高いデパートに行って、ちょっとお高いツリーを買おうと思って。

人生で初めてのクリスマスツリーなんだから、少しくらい贅沢しても許されるだろう?

そしてどうせなら、ツリーのみならず、寿々花さんが喜びそうなクリスマスグッズを揃えようかと思って。

それなら、ホームセンターよりデパートの方が良いかなぁって。

そして案の定、その選択は正解だった。

さすがにクリスマスシーズンなだけあって、ツリーだけではなく色んなクリスマスグッズが売っていた。

どれもこれもお洒落だなぁ…。最近のクリスマスグッズってこんな感じなんだ。

おっ、あれも良い。あ、これも良いとばかりに、次々と手が出た。

結果。

買い物を終えて帰る頃には、家出かと見紛うほどの大量の荷物に囲まれていた。

気持ち良く買い物を終えて、ついでに、家で待ってる寿々花さんの為に、お土産モンブランまで買って。

鼻歌交じりでデパートを出た時に、我に返って気がついたよ。

調子に乗って買い物したのは良いけど、問題は、この荷物を家まで持って帰らなければならないということである。

…やべ。どうすんの?これ。

持って帰る時のこと、全く考えてなかった。アホ過ぎる。

大量の荷物を見下ろして、しばし見つめ合った後。

睨んでても荷物が減る訳じゃないので、とにかく駅に向かって歩き出した。

…けど、さすがに途中で息切れを起こしたので。

観念した俺は、渡りに船とばかりに通りかかった空車のタクシーを呼び止めた。

タクシーで帰宅するなんて、年に一回許されるか否かの贅沢だぞ。 

まぁ良いか。年に一回なら。今年もうすぐ終わるし。

タクシーの運転手に、「凄い荷物ですね」と言われたのは、ちょっと恥ずかしがったが。

お陰で、無事に大量の荷物を持ち帰ることが出来ました。




「悠理君。おかえりー」

「おぉ…。ただいま…」

俺が帰ると、寿々花さんが出迎えに来てくれた。

買ってきたよ。あんたのクリスマスツリー。
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