アンハッピー・ウエディング〜後編〜
木枯らし吹く頃の章4
…と、その場では思ったものの。

家に帰って、改めて。

クリスマスツリーの前にでんと座って、ぽやーんとした顔で延々とツリーを眺めている寿々花さん…を、眺めていると。

また別の考えが浮かんでくる。

特別なことは何も…しないつもりだったけど。

…ケーキとチキンくらいは、用意しても良いかな。

寿々花さん、あんなにクリスマスに夢を持って…クリスマスツリーであれほど喜んでるんだから。

せめて、人並みにクリスマスっぽいことをするくらいなら、良いよな?

クリスマスケーキがあったら、多分寿々花さんも喜ぶだろう。

予約、まだ間に合うかな…。ケーキ屋でクリスマスケーキ、予約しておこう。

…それから。

今日の昼休み、雛堂が言っていたことを思い出す。

夜景の見えるレストランでクリスマスディナー、じゃなくて。その後言ってたこと。

そう、クリスマスプレゼントのことである。

ツリーが既にプレゼントみたいなものだから、別に良いかって思ってたけど…。

…それはそれ、これはこれ、だよなぁ?

寿々花さん、クリスマスプレゼント何か欲しいのかな…。

誕生日の時も思ったけど…人にプレゼントあげるのって、ましてや異性へのプレゼントって、なかなか難しいよな。

ましてや、うちの寿々花さんは…小さい頃、ろくにクリスマスプレゼントをもらった経験がない。

果たして寿々花さんは、どのようなクリスマスプレゼントを欲しがるのだろうか。

もらって嬉しくないってことはないだろうけど、どうせなら喜んでもらいたいと思うのが当然だろう?

何が良いかなぁ。お絵描き用のクレヨンとか?着せ替え人形とか?…多分玩具の方が良いんだろうな。



…などと、呑気に考えていられたのは。

我が家に、「奴」がやって来るまでのことだった。
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