アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…干し柿の話はともかく。

「何しに来たんだよ?」

「何しに、とはご挨拶だな」

またあれか。ご高尚なオペラ(笑)にでも誘いに来たのか?

「今度の日曜日、○○バレエ歌劇団のクリスマス公演のチケットが手に入ったんだ」

…何だと?

そう来たか。オペラの次はバレエだと。

バレーボール…のことじゃないよな?当然だけど。

踊る方のバレエだよな?白鳥の湖とか?

俺には全くついていけない話題。

「くるみ割り人形の全幕だよ。是非、一緒に行こうと思ってね」

「ふぇ?誰と?悠理君?」

ずっこけるかと思った。俺も円城寺も。

誰がこいつとバレエなんて観に行くかよ。

近所のスーパーに一緒に行くのさえ御免だ。

「そんな訳ないだろう。君とだよ。寿々花様」

「私?…でも…今度の日曜日って何日だっけ?」

「クリスマスイブ。24日だよ」

「…24日…」

何だって?クリスマスイブ?

イブに円城寺と、バレエ公演?

…何だろう。腹の奥底から燃え滾るような苛立ちを感じる。

「24日…。24日か…」

「何?何か予定でもあるの?」

「え?ううん…予定…は、ないけど」

「じゃ、決まりだね。SS席を予約して、ついでに公演後にはフレンチ・レストランのディナーを予約してあるから。勿論、ドレスコードはきっちり守るんだよ」

腹立つ。この上から目線。

クリスマスイブにバレエ公演を観て…おまけにフレンチ・レストランでディナーだと…?

…円城寺と…?

「当日の夕方、そうだな…四時頃に迎えに来るよ。支度して待ってて」

「あ、えぇと、うん…」

「それじゃあ」

言いたいだけ言って、円城寺はさっさと帰っていった。

…二度と来んな。

塩撒いておいてやろうか。いや待て、塩が勿体無い。 

何回会っても…あの上から目線の態度が気に入らない。

しかし問題は、円城寺の態度云々より。

よりにもよってクリスマスイブに、寿々花さんが円城寺と会う約束をしてしまったことである。

…なぁ、もしかして。これってもしかしてなんだけど。

…クリスマスデート、って奴なんじゃね?

そう気づいた途端、思いっきりちゃぶ台返ししたくなった。

…ちゃぶ台、ないけど。
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