アンハッピー・ウエディング〜後編〜
翌日。学校にて。

朝学校に着くなり、雛堂に絡まれた。

「はよーっす、悠理兄さん!数学の宿題見してー!」

「うるせぇ、黙れ。自分でやれアホ」

「辛辣!」 

何処がだ。

つーか、今雛堂に言われて思い出した。

そういや昨日、数学の宿題出てたんだった。

昨日の夜やろうと思ってたのに、それどころじゃない出来事のせいで、忘れてた。畜生。

仕方ない。今からやるか。

イライラしながら問題集を取り出そう…と思ったが。

しまった。問題集、持ってくるの忘れてた。

「くそっ…」

腹いせに、数学のノートをベシッと机に叩きつけた。

すると、それを見ていた雛堂が。

「…なんか今日、悠理兄さん機嫌悪くね?」

「あ?」

「あ、分かった。悠理兄さん、今日生理だな?」

…成程。

「…雛堂。俺に首を絞められたくなかったら、今すぐ俺の前から消えた方が身の為だぞ」

「ちょ、ちが。落ち着けって、冗談だから。冗談!」

冗談でも、言って良いことと悪いことってものがあるんだよ。

俺は今、そのような下らない冗談を笑い飛ばせる心境ではない。

「やべーって。悠理兄さんが荒れてんぞ。今日。どうする、真珠兄さん」

「半分はあなたのせいだと思いますけど…。まぁ、そういう日もあるんじゃないですか」

と、傍で聞いていた乙無。

乙無の方がよっぽど話が分か、

「分かりますよ。僕だって聖神ルデスの巫女が我が物顔で歩いている様を見ると、それはもう腸が煮えくり返るような、」

「うるせぇ。あんたも黙ってろ」

「…本当に機嫌悪いですね。悠理さん。何かあったんですか?」

…それは。

別に…ちょっと虫の居所が悪いだけだよ。

原因なんて何も…。

「悠理さんがここまで苛立ってるってことは、間違いなく寿々花さん絡みでしょうね」

ぎくっ。

…乙無の奴、鋭過ぎないか?

俺ってそんなに分かりやすい?

「何だ?無月院の姉さんが、よその男とデートにでも行くのか?」

雛堂の、その図星を突いた一言に。

俺は思わず、手に持っていたシャーペンをバキッと折りそうになった。

…雛堂。

あんたは今日…余程、俺の逆鱗に触れたいらしいな。

「…あ、やべ。図星?」

「…」

「ちょ、無言で自分の首を絞めようとすんのやめれ!」

畜生。逃げるんじゃねぇ。

これ以上余計なことを言って、俺を怒らせない方が良いぞ。
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