アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「大丈夫だと油断している間に、横から掠め取られなければ良いですね」

「…」
 
ただでさえ、不安と苛立ちで腸煮え繰り返ってたのに。

雛堂と乙無に変な脅しを受けたせいで、余計に落ち着かなくなってきた。

「負けてられねーよ、悠理兄さん。正妻の座を守る為にも、負けじとクリスマスデートに誘うべきだ!」

何言ってんだ雛堂。

「別に、対抗してる…訳じゃ…」

「じゃあ何だよ。無月院の姉さんが、その馬の骨野郎とくっついても良いってか?」

円城寺とくっつく?…寿々花さんが?

そんな馬鹿な…と言いたいところだったが。

元々は…そうなる予定、だったんだよな。

円城寺の方が寿々花さんを見限ったから、俺にお鉢が回ってきただけで…。

謂わば、元カレ元カノの関係と言うか…。

…いや、付き合っていた訳ではないのだが。

「…良い訳ないだろ」

「な?」

他の誰かなら、まだ納得出来る。

が、よりにもよって、あの円城寺に負けるって言うか、遅れを取るって言うか。

寿々花さんを良いように手玉に取って、あのお坊ちゃまがムカつくドヤ顔を晒している姿を想像すると。

やっぱり、ちゃぶ台をひっくり返し(ry。

…不思議なもんだな。ちょっと前まで、寿々花さんが何処の誰とデートしようが、俺には関係ないと思っていただろうに。

今だって…関係ないはずなのに。

何故こんなにも気になるのか。

俺と寿々花さんは、親同士の決めた仲であって、それ以上でもそれ以下でもないはずなのに…。

何故か今の俺は、どうしようもない危機感を覚えているのである。
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