アンハッピー・ウエディング〜後編〜
こうなったら、うかうかしていられない。

雛堂の言うように、円城寺に対抗してクリスマスデート…に、誘うべきなのか?

…どんな顔して、どんな風に誘えば良いんだ?

つーか、何処に誘うんだよ。

しかも、遊びに行くには絶好の日曜日…クリスマスイブに、既に円城寺との約束が入ってるのに。

幸いなことに、翌日の月曜日、つまりクリスマス当日なら空いている(多分)。

その日に何か…そう、雛堂が前に言っていたように、クリスマスパーティーでも開催するべきなのだろうか…と。

考えていた、矢先のことだった。

寿々花さんの方から、思いも寄らない誘いを受けたのである。




…その時俺は、考え事をしながら夕飯を作っている最中だった。

何を考えてるのかって?

そんなことは決まってる。…勿論、寿々花さんとの…クリスマスのことだよ。

今日一日、授業中もずーっと、そのことが頭から離れなかった。

お陰で、数学の宿題やってなくて、雛堂と一緒に先生に叱られている最中も。

何を言われても心ここにあらずで、全然反省していなかった。

不真面目な生徒で申し訳ないが、今の俺は数学の宿題どころではないのである。

…どうすっかなぁ。クリスマス…。

「…はー…」

俺がもっと気の利いた男だったらなぁ。

円城寺なんか目じゃなくて、スマートに寿々花さんをクリスマスデートに誘っ、

…などと、考え事をしていたせいだろうか。

「…悠理君、悠理君」

ちょいちょい、と俺の服の裾を、寿々花さんが引っ張っていたのに気づくのが遅れた。

…ん?

「…何だ?どうかしたか?」

「うん。私は何ともないんだけど…」

…けど?

「さっきから、何だか焦げ臭いなぁと思って…。…大丈夫?」

え?焦げ臭い?

そう言われてから、俺は気がついた。

目の前のフライパンから、焦げ臭い匂いが立ち昇っていることに。

「…!やべっ…」

いくら考え事をしていたとはいえ、料理中に、火を使いながらボーッとするなんて。

我ながら、不注意にも程がある。
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