アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「それとも、誰かに酷いことでも言われたの?」
「いや、そんなことは…」
「もしそうだったら言ってね。悠理君の代わりに、私が、こりゃーって怒ってあげるから。悠理君はこんなに良い人で優しくて、私の大好きな人なのに、傷つけるようなこと言っちゃ駄目、って怒ってあげるからね」
「…そりゃどうも…」
寿々花さんに怒られても、全く迫力がないって言うか…。
全然怖くなさそうな気がするけど。
まぁ、気持ちだけは受け取っておくよ。有り難く。
「…良いんだよ、俺のことは別に…。それより、今何か言いかけたんじゃないのか」
「ふぇ?」
「呼んでてただろ、今」
やっぱりあれか。このハンバーグ美味しくない、って?
言っても怒らないから、正直に言ってみ。
大丈夫。俺も美味しくないと思ってるから。
しかし、寿々花さんが言いたいのは夕食の文句ではなかった。
「うん…あのね、実は…。この間も言いかけて、円城寺君が来たから言いそびれてたんだけど…」
は?円城寺?
「この前、椿姫お姉様がアドベンドカレンダーを送ってくれたって言ったでしょ?」
「え?うん…」
今も、リビングのサイドテーブルの上に置いてあるよ。アドベンドカレンダー。
毎日、このカレンダーの小窓を開ける時、俺も一緒に付き合わされてる。
「後で気づいたんだけど、あの時に送られてきた段ボール箱をよく見たら、一緒にお手紙が入ってたんだ」
「お手紙…?椿姫お嬢さんからの?」
「うん。ちょっと早めのクリスマスカードと、それから…カレンダーの他にもう一つ、椿姫お姉様からクリスマスプレゼントが同封されてたの」
カレンダーの他にも、クリスマスプレゼント?
「それって、何…」
「ビュッフェ・レストランのペアお食事券」
「…!」
…何だと。
「日付も指定してあって…円城寺君との約束の、次の日なの」
「それって…クリスマスの日ってこと?25日?」
こくん、と頷く寿々花さん。
その時の俺と言ったら、不味いハンバーグの味も、悶々としていた悩み事も、頭の中から吹き飛んでいた。
ナイス、ファインプレーだ椿姫お嬢さん。
「しかも、カップル限定で、男女のペアじゃないと駄目なんだって。それで、悠理君、一緒に行ってくれるかなって…」
「…!」
「…駄目かな?悠理君、ビュッフェ好き?スイーツビュッフェらしいんだけど」
何でも良い。何でも。
「もし悠理君が駄目だったら、他に頼める人がいないから、二日続けてで悪いけど、円城寺君に頼ん、」
「大丈夫だ、任せろ。いくらでも付き合ってやるから」
ふざけんなよ。誰が、あのくそったれ円城寺に譲るものか。
あいつは指を咥えて待ってれば良いんだ。
「本当?一緒に行ってくれる?」
寿々花さんの顔が、ぱっと明るくなった。
「勿論。何処にでも一緒についていくよ」
「良かったぁ。椿姫お姉様からのお手紙に、『好きな人と一緒に行っておいで』って書いてたから、悠理君と一緒に行きたかったんだ」
マジで、ファインプレーだぞ椿姫お嬢さん。
今この場にいたら、是非とも拍手喝采を送りたかったところだ。
「いや、そんなことは…」
「もしそうだったら言ってね。悠理君の代わりに、私が、こりゃーって怒ってあげるから。悠理君はこんなに良い人で優しくて、私の大好きな人なのに、傷つけるようなこと言っちゃ駄目、って怒ってあげるからね」
「…そりゃどうも…」
寿々花さんに怒られても、全く迫力がないって言うか…。
全然怖くなさそうな気がするけど。
まぁ、気持ちだけは受け取っておくよ。有り難く。
「…良いんだよ、俺のことは別に…。それより、今何か言いかけたんじゃないのか」
「ふぇ?」
「呼んでてただろ、今」
やっぱりあれか。このハンバーグ美味しくない、って?
言っても怒らないから、正直に言ってみ。
大丈夫。俺も美味しくないと思ってるから。
しかし、寿々花さんが言いたいのは夕食の文句ではなかった。
「うん…あのね、実は…。この間も言いかけて、円城寺君が来たから言いそびれてたんだけど…」
は?円城寺?
「この前、椿姫お姉様がアドベンドカレンダーを送ってくれたって言ったでしょ?」
「え?うん…」
今も、リビングのサイドテーブルの上に置いてあるよ。アドベンドカレンダー。
毎日、このカレンダーの小窓を開ける時、俺も一緒に付き合わされてる。
「後で気づいたんだけど、あの時に送られてきた段ボール箱をよく見たら、一緒にお手紙が入ってたんだ」
「お手紙…?椿姫お嬢さんからの?」
「うん。ちょっと早めのクリスマスカードと、それから…カレンダーの他にもう一つ、椿姫お姉様からクリスマスプレゼントが同封されてたの」
カレンダーの他にも、クリスマスプレゼント?
「それって、何…」
「ビュッフェ・レストランのペアお食事券」
「…!」
…何だと。
「日付も指定してあって…円城寺君との約束の、次の日なの」
「それって…クリスマスの日ってこと?25日?」
こくん、と頷く寿々花さん。
その時の俺と言ったら、不味いハンバーグの味も、悶々としていた悩み事も、頭の中から吹き飛んでいた。
ナイス、ファインプレーだ椿姫お嬢さん。
「しかも、カップル限定で、男女のペアじゃないと駄目なんだって。それで、悠理君、一緒に行ってくれるかなって…」
「…!」
「…駄目かな?悠理君、ビュッフェ好き?スイーツビュッフェらしいんだけど」
何でも良い。何でも。
「もし悠理君が駄目だったら、他に頼める人がいないから、二日続けてで悪いけど、円城寺君に頼ん、」
「大丈夫だ、任せろ。いくらでも付き合ってやるから」
ふざけんなよ。誰が、あのくそったれ円城寺に譲るものか。
あいつは指を咥えて待ってれば良いんだ。
「本当?一緒に行ってくれる?」
寿々花さんの顔が、ぱっと明るくなった。
「勿論。何処にでも一緒についていくよ」
「良かったぁ。椿姫お姉様からのお手紙に、『好きな人と一緒に行っておいで』って書いてたから、悠理君と一緒に行きたかったんだ」
マジで、ファインプレーだぞ椿姫お嬢さん。
今この場にいたら、是非とも拍手喝采を送りたかったところだ。