アンハッピー・ウエディング〜後編〜
朗報。

こちらからクリスマスデートに誘うまでもなく、寿々花さんの方から誘ってくれた。

それもこれも、気を利かせてレストランのお食事券を送ってくれた、椿姫お嬢様のお陰だ。

あの人は素晴らしい。

「クリスマスの日に、悠理君とお出掛け…。楽しみだねー」

「そうだな…」

お膳立ては完璧、と言ったところか。

…あとは、クリスマスプレゼントだな。

レストランに食事に行くのなら、そこでクリスマスプレゼントを渡すべきだろう。

なんか、こう…気の利いたプレゼントってないだろうか。

本人に聞くか…?

でも、本人に聞くんじゃ芸が無いって言うか…。

考える努力を放棄した、手抜きのような気がしないか?

それに、誕生日の時も聞いたじゃん?

今度は、俺がちゃんと考えて…寿々花さんが欲しがりそうなものを選ぶべき、なのでは?

「…?悠理君、どうしたの?」

「え、な、何?」

突然、寿々花さんがじっと俺の顔を覗き込んでいることに気づいて、俺はたじろいだ。

「何だか難しい顔をしてるから…」

「べ、別に…難しい顔なんて…」

「…やっぱり、ビュッフェは嫌だった?それとも、他の人とお出掛けする予定があったの?」

「!そ、そんなことは」

寿々花さんの顔が、悲しそうに曇った。

「お友達?いつもの、邪神の眷属と愉快な仲間達のお友達と出掛けるの?それだったら、良いよ、お友達を優先して…」

誰だよ。邪神の眷属と愉快な仲間達って。

俺と雛堂のことか?冗談じゃない。

「ないない。予定なんてないって。雛堂は兄弟の世話で忙しいらしいし、自称邪神の眷属は、自称邪神の眷属の仕事で忙しいらしいし。俺は暇なんだよ」

「本当?一緒にお出掛けしてくれる?」

「するする。いつでも、何処でも良いぞ」

「良かったー」

そう言って、また寿々花さんの顔に笑顔が戻った。

ホッ…。

危ない危ない。くれぐれも、寿々花さんに勘付かせないようにしないと…。
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