アンハッピー・ウエディング〜後編〜
小花衣先輩から、有り難いご意見をいただき。

早速俺は、アドバイスを実行に移すことに決めた。

その週の週末…つまり、23日の土曜日。

丁度今日から冬休みが始まる、というその日に。

俺はバスに乗ってショッピングセンターに行き、そこで寿々花さんへのクリスマスプレゼントを探すことにした。

こう見えて俺、昨日の夜も一生懸命調べてきたんだよ。

スマホで検索しまくった。「女子高生 クリスマスプレゼント」、「クリスマスプレゼント 女性」、などの検索ワードで。

でも、女子高生以上の女性へのクリスマスプレゼントって、出てくるのはメイクグッズとかブランド物のバッグとか財布とか、そんなお洒落なのばっかり。

寿々花さんがメイクなんてしてるの、見たことないし。 

ブランド物のバッグや財布どころか、そもそもお金の数え方さえ覚束ない人なのに。

それに、恋人でもないのに、恋人でもないのにブランド物のプレゼントって、なんか重い気がしないか?

もっと気軽に、こう…女友達にでも渡すような感覚で渡したい。

…いないけどな、俺。女友達。

生まれてこの方、母親以外の女性にプレゼントなんて渡したことがない。

え?寂しい奴だって?

うるせぇ。

そんなことより、寿々花さんへのプレゼントだ。

あの人、見た目は大人だけど中身は子供だからさ。

思い出してみろ、誕生日の時。何が欲しいかって聞いたら「シャボン玉」って言ってたじゃん。

そういう人が、今流行のコスメグッズなんてもらって喜ぶと思うか?

俺は無理だと思う。

いっそ、もっと対象年齢を下げた方が良いのかなって。

「クリスマスプレゼント 小学生 女子」で検索して調べたところ。

キッズ用のドレッサーとかお絵描きセットとか、女児向けの玩具がいっぱい出てきて。

こっちの方が、いかにも寿々花さんが好きそうだなぁと思った。

で、今日、こうしてショッピングセンターにやって来た。

小花衣先輩の言うように、お店に来て、実物を見てから決めようと思って。

早速、ショッピングセンターの玩具コーナーにやって来た…の、だが。

「…入りづらっ…」

玩具コーナーの前で、俺は思わず尻込みしてしまった。

クリスマスシーズンだけに、玩具を買いに来たちびっ子と、そのお父さんお母さんでいっぱい。

楽しそうに玩具を選ぶ、仲良さそうな親子がキャッキャウフフしてるのに。

むさ苦しい男子高校生には、大変場違いな場所である。

入りづらっ…。

分かる?異性の洋服売り場に一人で入っていくような気持ち。

ましてや、俺がこれから見ようとしてるのって…女児向けの玩具コーナーであって。

この中に入っていくの、物凄く勇気が要る。

「お前何でここにいるの?」みたいな空気になりそう。

躊躇いがちに、玩具コーナーの近くをうろうろしていたが。

…なんか、この方が不審者っぽい気がする。

恐る恐る、玩具コーナーに足を踏み入れようとしたその時。

「…えっ?」

「お?何だ、悠理兄さんじゃん」

俺が玩具コーナーの前で躊躇っていたところに、思わぬ人物と遭遇した。

そう、雛堂である。
< 387 / 645 >

この作品をシェア

pagetop