アンハッピー・ウエディング〜後編〜
その日の一日、それはもう、俺はイライラしながら過ごした。

イライラパワーで風呂掃除したり、家中に掃除機をかけたり、拭き掃除をしたりしたけど。

如何せん全然集中出来ず、大雑把にゴシゴシ擦ってるだけだから、全然綺麗になってる気がしない。

…今頃寿々花さんは、円城寺とバレエを観てる頃かな。

それが終わったら、優雅に円城寺とフレンチ・レストランでディナー…。

…けっ。

俺だって負けてないからな。今日の夕飯、一人で寿司を食べてやるから。

…ちらし寿司だけどな。自分で作った奴。

良いじゃんちらし寿司。美味いし。

掃除をした後、市販のちらし寿司の素を使って作ったちらし寿司を食べ。

暇を持て余し、ついでにイライラを持て余した俺は。

雛堂がくれたゲーム機を引っ張り出し、『大乱戦!スマッシュシスターズ』を始めた。

ストレス解消にうってつけかと思って。

しかし、ろくにゲームの出来ない者が、ストレス解消の為にスマシスなどやるものではないということを思い知らされた。

むしろ俺の方がコンピューターにボコボコにされて、逆にストレスが溜まった。

畜生。ゲームでさえストレス発散させてくれないのかよ。

しかし、俺ってマジでゲーム下手過ぎないか?

寿々花さんはめちゃくちゃ上手いのにな。両極端過ぎるんだよ。

俺が得意なのは…せめて人並みに出来るのは…掃除と料理くらいか。

家庭的だなぁ…。

仕方ないので、俺はエプロンをつけてキッチンに入った。

…夕飯は食べ終わったから、他に作るものもないけど。

明日の為に、アレ…作っておくとするかな。

俺は、ちらりと壁の時計を見上げた。

寿々花さんが修学旅行に行ってる間も、よくこうやって時計を見上げたもんだが。

今日も、数分おきに時計を確認する癖が抜けない。

寿々花さん…今頃何をしてるんだろう?

そろそろバレエ公演も終わって、レストランに入った頃だろうか。

…円城寺に、クリスマスプレゼントを渡されてたりして。

…何をもらってるんだろう。

花とか?服とか?…アクセサリーとか?

そのプレゼントって、俺が昨日ショッピングセンターで買ってきたプレゼントより、センスある?

…分からない。

結局は、もらった人が…つまり寿々花さんが…どう思うか、という話だからな。

どちらがより、寿々花さんを楽しませてあげられるか、喜ばせてあげられるか。という勝負である。

…勝負っていうのは言い過ぎかもしれないけど。

でも円城寺にだけは負けたくないから、やっぱり勝負だな。

「…はぁ…」

…寿々花さん、早く帰ってこないかな…。
< 394 / 645 >

この作品をシェア

pagetop