アンハッピー・ウエディング〜後編〜
あとは。

明日、俺が寿々花さんを喜ばせることが出来るか、だな。

「ふわぁ〜…。バレエ観て来たから…眠い…」

寿々花さんは俺の気も知らず、呑気に目を擦っていた。

「寿々花さん…。明日の約束、覚えてるよな?」

「…ふぇー?」

おい、大丈夫か?

「一緒にビュッフェ・レストランに行くって…」

「うん、覚えてるよー。楽しみだね」

良かった。ちゃんと覚えててくれたようで。

忘れられてたら、俺はこの時点で円城寺に敗北を喫したも同然…。

…って、何を考えてるんだか。俺は。

あいつと張り合って勝ったところで、何か得られるものでもあるのか。

少なくとも寿々花さんは、円城寺に対して「その気」は全くないようだし…。

もしも「その気」があるなら、そんな人からもらったプレゼントを、こんな粗末に扱わないだろう?

もっと喜ぶはずだし、インテリアにせず、ちゃんと耳ににつけるはずだ。

それをしないってことは…まぁ、そういうことだよ。

その程度の存在だってことだ。寿々花さんにとって、円城寺は。

それを知れただけでも、俺としては充分安心した。

…ホッ。

「…?悠理君、どうかしたの?」

「え?いや、何でもない」

心の中で勝手に円城寺と張り合って、勝手に勝った気になってホッとしている、とも言えず。

「それは良いから、明日に備えて今日は早く寝ろよ」

「うん、そうするー。…おやすみ、悠理君」

「おやすみ」

クリスマスイブの夜。

良い夢見ろよ。
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