アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…およそ一時間後。

我が家に、二人の助っ人を特殊召喚。

「うまっ…。めっちゃ美味いな、これ」

「悠理さん、たこ焼き職人ですね」

「…そりゃどうも」

俺の友人である雛堂大也(ひなどう だいや)と、乙無真珠(おとなし まじゅ)は、焼き立てのたこ焼きを頬張っていた。

来てくれて良かった。

「今日に限って、『用事あるから無理』って言われたらどうしようかと思ったよ。」

「大丈夫、大丈夫。自分超暇だからさー。夜中でもいつ呼んでくれても良いぜ。なぁ、乙無の兄さん」

「僕は困りますけどね。でも、今日はちょっと退屈だったんです」

お?それは珍しい。

乙無と言えばいつも、「邪神の眷属(笑)の使命が〜」云々と、中二病全開の発言をしているのに。

と、思ったが。

「昨日、忌々しい聖神ルデスの巫女を一人、この手で討ち滅してやったんです。お陰で今日の僕は、いつもより気分が良いんです」

ドヤ顔で、またしても中二病発言。

あ、そう。ふーん。

そりゃまた大変なこって。

俺と雛堂は、もう半年近く乙無の中二病に付き合わされて、慣れているけど。

「せいしん…のみこ?それって強いの?」

我が家のお嬢様、寿々花お嬢さんは、びっくりしてそう尋ねた。

こら、寿々花さん。相手にしなくて良いから。

乙無の戯言だよ。

「強くはないですよ。ただ、放置しておくと面倒なんです。だから始末してやったんですよ」

「おぉ、凄い…!何だか格好良いね」

「ありがとうございます」

乙無。うちのお嬢さんがアホの子だからって、からかうんじゃねぇぞ。

…そんなことより。

「ほら、焼けたぞ寿々花さん」

「わーい。悠理君のたこ焼きだ」

「たこ入ってないけどな、それ…」

寿々花さんが、たこ食べられないって言うから。

冷蔵庫を探って、たこの代わりになりそうなものを入れてみた。

チーズと魚肉ソーセージと、それからベーコンな。

果たして、たこ焼きに合うのかなぁと思ったが。

「どうだ、寿々花さん。美味しいか?」

「うん!とっても美味しいよ」

「そりゃ良かった」

という、俺と寿々花さんのやり取りを見て。

「…見ろよ、乙無の兄さん。あれがリア充の会話だぜ」

「大也さんには一生無理そうですね」

「おう。おめーもな」

雛堂と乙無が、ぶつぶつと呟いていた。

…何だよ。言いたいことがあるなら、はっきり言えよ。

「…しっかし、悪いね。この間はケーキ食べさせてもらって、今度はたこ焼きご馳走になっちゃってよ」

「あ?いや、別に良いよ」

むしろ、いきなり呼びつけて、余り物食べてもらって。

こちらの方が助かってるくらいだから。

「今度、なんかお礼しないとな。なぁ、乙無の兄さん」

「それ、前も言ってましたね」

…まぁ、別に何も返してくれなくて良いけど。

見返り求めて、たこ焼き焼いてる訳じゃないし。

…それよりも。

「そういや、雛堂。夏休み、あと二週間ちょっとで終わるけど…」

「おい、やめろって。自分を現実に引き戻すつもりか?」

いつだって今が現実だっての。

「夏っぽいことする、って言ってたの、あれどうなったんだ?」

なんか考えておく、って前に言ってたよな。

あれから音沙汰ないけど、結局何か思いついたのか?
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