アンハッピー・ウエディング〜後編〜
エコバッグの中身は、と言うと。

ラップにくるんで二重にビニール袋に入れた…。

「…えっと。これ、スイカ?」
 
「うん、スイカ」

…だよな?

ビニール袋二重に入ってても、匂いが漂ってくる。

何処からどう見ても、半分に切ったスイカ。

「…何でスイカ?」

「え?スイカ嫌いだった?」

「いや、嫌いじゃないけど…何でいきなり?」

「説明すると長くなるんだが。要するにうちで持て余したから持ってきたんだわ」

とのこと。

よく分からないけど…お裾分け、ってことだろうか?

「保冷剤入れまくって持ってきたから、まだ冷たいと思うよ。さぁ、遠慮なく食ってくれ」

「…どうも」

素直に受け取っておくよ。

「無月院の姉さん、スイカ好き?」

「うん、好きー」

「おー。そりゃ良かった。重たいの持ってきた甲斐があったわ」

雛堂からスイカの入ったビニール袋を受け取ると、確かにずっしりと重かった。

まるまる一玉じゃないんだぞ。半玉でこの重さ。

「でっけー…。食べきれるか?これ…」

「本当は一玉持ってくるつもりだったんだぜ?乙無の兄さんがいれば、無限に食ってくれると思って…」

あー。乙無の胃袋はブラックホールだからな。

「でも、乙無の兄さんが来ないって言うからさー。仕方なく真っ二つにして持ってきたの」

それは英断だよ、雛堂。

この大きさ、半玉でも凄まじい量だぞ。

更にこの半分、四分の一でも充分だった。

雛堂が言った通り、保冷剤がいくつも入っていて、冷蔵庫に入れなくてもスイカはよく冷えている。

このまま切ろうかな。

「すぐ食べようか。寿々花さん、どうする?」

「うん、食べるー」

よし。じゃあ遠慮なく。

俺はスイカをキッチンに持っていって、包丁で三角にカットした。

すげー甘い匂い。

スイカなんて、いつぶりだろう?もう何年も食べてなかったような気がする。

「はい、切れたぞ」

「わーい。いただきまーす」

寿々花さん、早速スイカにがぶり。

お嬢様らしからぬダイナミックな食べ方だが、やっぱりスイカはこうじゃないとなぁ?

ちまちま種を取って食べるなんて、みみっちいからな。

じゃ、俺もいただきます。
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