アンハッピー・ウエディング〜後編〜
慌てて否定したが、寿々花さんはずーん、と沈んでしまい。

「やっぱりもう一個の候補に…イモムシのチョコにすれば良かったかな…」

イモムシのチョコ!?

「いや、これで良い。むしろこれが良いって!ありがとう!充分嬉しいよ」

「本当?…喜んでくれた?」

「あぁ。めちゃくちゃ喜んでるよ。ありがとう」

「良かったー」

あぁ。俺もホッと胸を撫で下ろしてるよ。

危ないところだった。

一歩間違えたら、今頃危うくイモムシのチョコに悲鳴を上げていたところだ。

「私の夢によく出てくる黒い死神みたいな人がね、いつも青い薔薇のブローチをつけてるから。そのキーホルダーを見た時思い出したんだー」

「そ、そうなのか…?」

相変わらず怪しい夢ばっか見てんな。

死神の夢ってマジ?大丈夫なのか。何かの暗示?

それ、本当に死神…?

…まぁ、良いか。

寿々花さんにしては良識あるプレゼントで。

「悠理君が喜んでくれたなら良かった」

「あぁ…。大事にするよ」

「ありがとう、悠理君。悠理君のお陰で、今年のクリスマスはとっても楽しかった」

と、寿々花さんは心底嬉しそうにそう言った。

…マジで?

本当にそう思ってくれてるなら、俺としても何よりである。

「何だかね、生まれて初めて、サンタさんが来てくれたみたい」

「そうか…。きっとサンタの奴、寿々花さんが毎年良い子にしてることにようやく気づいて、ここ何年分の『クリスマスプレゼント』を今日、まとめて持って来てくれたのかもな」

「そうだね。本当にそう…。そうだったら嬉しいな」

でも、まだ足りないからな。

来年も、これまでの分を補って余りある、楽しいクリスマスを期待しているよ。
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