アンハッピー・ウエディング〜後編〜
さて、お雑煮を食べ終えて。正月の朝。

…何をしよう?

まずは、年賀状の確認だな。

早速ポストを見に行くと、年賀状が数枚入っていた。

あれ?少なくない?

送った数と全然見合ってないんだけど。

皆、この一年で俺のことを記憶から消去してしまったのか、と切ない気持ちになったが。

あ、そうか。多分、実家の方に送られてるんだ。

俺の旧友達は、俺の新しい住所をまだ知らないから。

今年の年賀状には新しい住所を書いてあるから、来年からはこっちに送ってくれるかな…。

「お、これは雛堂からだ」

数枚の年賀状の中に、雛堂からの年賀状を見つけた。

めっちゃ雑な手描きのうさぎのイラストに、「あけおめ!ことよろ!」とデカい字で書いてあったよ。

雑。いかにも年末に急いで書いたみたい。

でも雛堂らしい。

それから…。

「お。こっちは乙無からだな…」

逆に乙無は、几帳面な字で「迎春」と書いてあった。

相変わらず、対象的な二人である。

二人共、今年もよろしくってことで。

それから…。

「…おっ。寿々花さん、あんたにも年賀状来てるぞ」

「ほぇ?」

とてとて、と寿々花さんがこちらに寄ってきた。

「これは…お姉様からだ」

「良かったな」

年賀状と言うか、外国からの手紙だから…さしづめニューイヤーカードってところか。

寿々花さんに似た達筆な英語で、新年の挨拶が書いてあった。

俺には読めないけど、寿々花さんはちらっと読んだだけで何て書いてあるか分かるんだよな。

「椿姫お嬢様、何だって?」

「二人で楽しい一年を過ごしてください、だって」

「そうか」

椿姫お嬢様も、相変わらずだな。

ってか、年末年始なのに、日本に帰ってきてないのか。

…一方。

「げっ…。これは…」

もう一枚、寿々花さん宛ての年賀状が届いていた。

誰有ろう、円城寺である。

年始早々、奴のムカつくドヤ顔を思い出してげんなりとした。

「どうしたの?悠理君」

「これ、円城寺から年賀状」

「ほぇー」

年賀状って言うか…椿姫お嬢様と同様、年賀はがきに書いてあるんじゃなくて、普通に便箋入りの封筒だけど。

こちらは、イギリスからの手紙である。

外国には、年賀状の文化ってないのだろうか。

「…」

寿々花さんは、円城寺からの年賀状(手紙)をじーっと眺めていた。

「…どうした?大丈夫か?」

「…ふぇ?うん。へいきー」

そうか。

一応、寿々花さんにも年賀状(?)が2枚届いたぞ。良かったな。

「来年は、寿々花さんも椿姫お嬢様に年賀状書いてあげたらどうだ?」

妹から年賀状届いたら、喜ぶんじゃないだろうか。

まぁ、あの人は何処にいても、大勢の人から年賀状をもらえるんだろうけど。

「うん、やってみるー」

と、寿々花さんは返事をした。

椿姫お嬢様宛てなら、英語で書いてもフランス語で書いても良いぞ。

あの人なら、大抵何語でも理解してくれるだろう。
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