アンハッピー・ウエディング〜後編〜
お参りの後。

「ふー、終わった。神様、お願い叶えてくれるかなー」

「どうかな…」

小さな神社だから、神様もあまり力がないかもしれない。

「…ところで、寿々花さんはどんなお願いをしたんだ?」

って、聞いても良い?内緒なら内緒でも良いけど。

「ふぇ?えーっとね…悠理君ももっと仲良くなれますように、ってお願いしたんだー」

へぇ。マジかよ。

俺と方向性が一緒じゃん。

「悠理君は?どんなお願い事したの?」

「俺は…。まぁ、俺も似たようなもんだよ」

「そっかー。二人でお祈りしたんだから、きっと2倍の効果があるよ」

そうだったら良いんだけどな。

こればっかりは、神様の力でもどうにも…。

すると。

「悠理君、見て見て」

「あ?」

「おみくじ売ってる」

寿々花さんは、おみくじやお守りを売る売店を指差した。

ほほう。おみくじ。

初詣の帰りにおみくじを引いて、今年一年を占おうと?

良いぞ。

「引いてみるか?」

「うん、引くー」

じゃあ、やってみるとしよう。

俺は普段、毎年、初詣に来てもおみくじは引かないようにしている。

おみくじを信じてないのかって?…そうじゃないよ。

ただ、万が一年始一発目に「凶」とか、ましてや「大凶」なんて引いてしまったら。

新年早々ショックを受けて、ブルーな気分になるだろ?

既に誰もがご存知の通り、俺はくじ運というものが絶望的に悪いからな。

おみくじなんか引いたら、年始早々酷い目に遭いかねない。

そう思って、毎年おみくじは遠慮してきたのだが…。

今年は、寿々花さんがいるからな。

寿々花さんがおみくじを引くのに、俺だけ「やらない」という訳にもいかず。

ええい、南無三。

売店の巫女さんに百円を払って、二人で一枚ずつおみくじを引いてみた。

さぁ、どうなる?俺の今年の運勢は。

「えーと。どれどれ…」

ぺら、とおみくじの薄紙を開いてみると。

そこには、黒い太文字で…。

「…」

「凶」だってさ。

うん、知ってた。そんなことだろうと思った。

分かってるよ。

せめて小吉…あわよくば中吉くらい、なんて甘い希望を抱いたのが間違いだった。

良いよ、別に。むしろ、ここで今年の悪運を少しだけ回収したと思おう。

おみくじには、今年の運気、恋愛運、金運、学問などの項目がそれぞれ書いてあった。

えー、今年の運気…低迷。

恋愛運…微妙。

金運…期待するな。

学問…絶望的。

以上。俺の今年の運勢でした。

「…」

…酷くね?いくらなんでも酷くね?「凶」とはいえ、限度ってもんがあるだろ。

やっぱり、おみくじなんて引くんじゃなかった…。

と、後悔しても時既に遅し。
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