アンハッピー・ウエディング〜後編〜
駄目だ。寿々花さんに選ばせてたら、全然まともな服を持ってこない。

…かくなる上は。

「…よし、分かった。これにしよう」

「ふぇっ」

俺は、手近にあった暖かそうなクリーム色のコートを手に取った。

寿々花さんが決められないなら、俺が決める。

…え?女モノの服を決めるセンスがあるのかって?

ある訳ねーだろ。適当だ。

でも、どれを選んだにせよ。
 
さっき寿々花さんが選んだ、おもしろコートよりはマシだから。 

「これだ。もうこれにする。俺が決めた」

「えー」

「文句を言うな」

少なくともこれなら、背中に何も書いてない。

よし、もうそれだけで採用。決定。購入。

大丈夫だ。寿々花さんなら何でも似合うよ。

早速、俺はそのクリーム色のコートをレジに持っていった。

で、その場でタグを切ってもらって。

「ほら。ちょっと着てみろ」

「え、ここで着るの?」

その「女番長」コートを早く脱いで欲しいんだよ。分かってくれ。

寿々花さんに、買ったばかりのコートを渡すと。

「どう?似合うー?」

寿々花さんは、その場でくるりと回ってみせた。

おぉ、良いじゃん。

超適当に選んだ割には、めっちゃ似合う。

特に、背中に文字が書いてないところが素晴らしい。

「あぁ。似合ってるよ」

「本当?やったー。悠理君に褒めてもらっちゃった」

ただ、ちょっと甘過ぎると言うか…。

腰に大きなリボンが、襟元にもレースがふんだんにあしらわれて、可愛らし過ぎたかもしれない。

似合ってるのは確かだけど、こういう可愛らしい系のデザインは、寿々花さんはあんまり好きじゃなかったかな…。

と、思ったが。

「えへへ、嬉しいなー。悠理君が選んでくれたお洋服〜」

嬉しそうに、自分の着ているコートを見下ろしてご満悦。

どうやら、それなりに気に入っているご様子。

なら、結果オーライだな。

今度からは女番長コートじゃなくて、そっちを着てくれ。
 
これで、ようやく隣を歩いていても恥ずかしくない。
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