アンハッピー・ウエディング〜後編〜
冬休み明けから、大掃除、入試の準備と散々こき使われ。

げっそりと疲れて帰宅。

「ただいま…はぁ…」

「あ、悠理君だ。おかえりー」

寿々花さんが、てこてこ歩いて玄関までお迎えに来てくれた。

何だろう。ちょっと疲れが癒やされる。

家に帰って、飼ってる猫が玄関で待っててくれたら、ほっこりするだろ?

あれと同じ感覚。

寿々花さんは今日もまだ冬休みなんだよな。良いなぁ。

「俺が留守の間、良い子にしてたか?」

「うん。アイスクリーム屋さんごっこしてたんだー」

とのこと。

俺達が必死に、入試の問題を分けている間に…。

寿々花さんは、家でアイスクリーム屋さんごっことは…。

乙無じゃないけど、この世の中は本当に不平等だよ。

まぁ良いけど。大人しくしててくれたんなら、それで。

「8段のアイスクリームを売るアイスクリーム屋さんなんだよー」

「へぇ…。…8段…!?」

食べにくそっ…!絶対下の方溶けてるだろ。

ま、まぁ玩具だから。

「はぁ…やれやれ…」

「悠理君も一緒に、アイスクリーム屋さんごっこする?」

一人で遊んでるのつまらなかっただろうし、出来れば付き合ってあげたいのは山々なんだが…。

疲れ過ぎてそれどころじゃないので、ちょっと休みたい。

「ごめんな。疲れたから…ちょっと休ませてくれ」

「…悠理君、本当に疲れてるみたい…。…大丈夫?正月バテ…?」

そんな夏バテみたいに。

違うよ。あんたんとこの教師に…新校舎の教師に散々こき使われたせいで。

なんて、寿々花さんが悪い訳じゃないんだから、寿々花さんに文句を言っても仕方ない。

「大丈夫、大丈夫。久し振りに学校行ったから疲れてるだけだよ」

「そうなの…?大丈夫?あっ、背中もみもみしてあげよっか?」

仮にも無月院家のお嬢様が、人にマッサージなんてするもんじゃねぇよ。

自分がマッサージされる側だろうがよ。

「良いよ、大丈夫。ちょっと休んだら治るから」

「…そっか…」

「じゃ、後でな」

俺は努めて元気そうな振りを装いながら、寿々花さんを置いて自分の部屋に戻った。

マジで、ちょっと休もうと思って。

夕飯の時間になったら起きよう。

幸い、正月休みの間にたくさん買い物をしておいて、冷蔵庫の中には食材が残ってるし。

今夜は、出来るだけ簡単なもので済ませようかな…。

すると。

ふらふらと部屋に帰っていく、俺の背中を見つめながら。

「悠理君本当に疲れてるみたい…。私、何か出来ることないかな…?」

と、寿々花さんが呟いていた。

が、その声は俺には届いていなかった。

「…よし」

寿々花さんは、何かを決意したような顔で頷いた。
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