アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「…どう?悠理君。美味しい?」

「うん。めっちゃ美味い」 

これ、売れるんじゃね?

って思うくらい美味しかった。

「そっか。良かったー」

安堵した様子で、寿々花さんは自分も食べ始めた。
 
信じられるか?この美味しさ。
 
聖青薔薇学園の家庭科教師に見せてやりたい。

これが、あのキッチンを爆破し、先生を失神させた寿々花さんの手料理なんだぞ。

他の料理は壊滅的な腕前だけど、インスタントラーメンのアレンジレシピなら、途端にこれだよ。

めちゃくちゃ美味いの。本当にこれ、原材料インスタントラーメンか?

言われなきゃ気づかないぞ。多分。

「凄いな、寿々花さんは…。インスタントラーメンで、こんなレシピを考えるなんて…」

「そうかな?こうしたら美味しいかなーと思って、思いつきと想像だけで作ってるんだけど…」

「その思いつきで、これほど美味しくなるんだから…。やっぱり凄いよ」

何が一番凄いって、インスタントラーメンのアレンジレシピを考えつくことじゃなくて。

そんな素晴らしい才能があるのに、インスタントラーメン以外のレシピで料理を作ったら、とても食べられたものじゃないゲテモノを錬成してしまうことだな。

極端にも程があるだろ。

まぁ良いや。僅かでも、ささやかでも、立派な特技であることに変わりはない。

それに、インスタントラーメンのアレンジレシピ以外の料理は、俺が作るからさ。

そこは分業ってことで、役割分担していこうぜ。

大体、今日は俺が寝過ごしたのが原因であって。

寿々花さんは俺を手伝うつもりで、自ら夕食作りに立候補してくれたんだから。

俺に、文句をつける権利はない。

「ありがとうな、寿々花さん…。助かったよ」

「ううん。悠理君が美味しいって食べてくれて、良かったー」

と、寿々花さんはご満悦の様子だった。

助かったよ、本当に。

お陰で、昨日今日の疲れが吹っ飛んだ気分だ。

こんな単純なことで機嫌を直すのだから、俺も案外チョロい奴だ。我ながらな。
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