アンハッピー・ウエディング〜後編〜
リアルなキノコのクッション…ねぇ。

…何でそんなもん持ってんの?

「雛堂って、そんなにキノコ好きだっけ?」

「え?別に。そんな好きじゃねーけど」

だから人に押し付けようという腹か。そうなのか?

自分が欲しくないものを人にあげるな。

「ちっ、本物のキノコと偽って、二人に押し付けようと思ったのに…。全然引っ掛からねぇよこいつら」

おい。本音が出てるぞ。本音が。

この野郎。雛堂君が学校に不必要なもの持ってきてます、って先生に密告してやろうか。

「あなたの浅知恵に引っ掛かる、愚かな僕ではありません。何せ僕は、偉大なる邪神イングレア様の忠実なる下僕ですから」

ドヤァ。

とか言ってあんた、この間羊羹に釣られて、雛堂に宿題写させてたじゃん。

「まぁ良いや。バレたものは仕方ない」

開き直る雛堂。

「ちょっと見てくれよ、これ」

と言って、雛堂は紙袋の中身をチラッと見せてくれた。

そこには確かに、抱きまくらみたいなクッションみたいな、ふっかふかの…。

…キノコ、が入っていた。

でっけー…。

「見ろよ。マツタケにマイタケにエリンギ…。ポルチーニまであるんだぜ?」

無駄な高級感。

「これ…全部クッションか?」

「うん」

「何でこんなものを…?」

「いや、それがさー…」

…何?その照れ笑い。

気持ち悪いんだけど。早く言えよ。

「正月にさ、福袋買いに行ったんだわ。悠理兄さんも行った?福袋買いに」

「え?あぁ、うん。行ったけど…」

「マジ?会わなかったな。いつ行ったの?」

「正月。1月1日に」

「じゃあ会わねぇわ。自分が行ったの2日だったから」

成程。一日ズレてたのか。

「乙無は?正月、福袋買いに行ったりしたのか?」

「ふっ、邪神の眷属たるこの僕が、そのような世俗的な買い物をするとでも?年末年始は、浮かれた人々の罪の器を満たすべく…」

「あー、はいはい。つまり寝正月してたと」

「ちょっと。寝てないですって。話聞いてくださいよ」

はいはい。後でな。

…で、話を戻すとして。

「福袋が何だってんだよ?」

「毎年色んなの売っててさぁ、あれもこれも欲しくなるだろ?」

…いや、別に…。

基本的に俺は…日用品の福袋には興味をそそられるけど、それ以外はあんまり。

まぁでも、今年初めて寿々花さんに付き合って、お菓子やアイスクリームの福袋を買ってみたら。

意外とどれも美味しくてお得感もあって、満足だった。

機会があれば来年も買いたいね。

「そしたらさぁ、つい目に入っちゃったんだよ。雑貨屋さんの福袋が」

「…雑貨屋?」

「開けてみるまで中身の分からない、お楽しみ福袋がさぁ」

おい。まさかあんた。

「買ったのか?あのガラクタの詰め合わせを…!?」

「…てへっ」

野郎の「てへっ」ほど気持ち悪いものは、なかなかない。
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