アンハッピー・ウエディング〜後編〜
この馬鹿。やってはならないことをやりやがったな。

ああいう、中身の分からないお楽しみ袋系の福袋は大変危険である。

ある種の賭けと言っても良い。

確かに開ける楽しみはあると思うよ?でも、それだけじゃん。

大抵ろくなもの入ってないんだって。こんなのもらってどうするんだ、と思うような売れ残りのガラクタがさぁ。

そりゃ、たまには当たりの福袋もあるかもしれないけど…。

「ばっ…かじゃねぇの?ガラクタしか入ってないだろ、あんなの」

「ガラクタじゃねぇよ、失礼な。何が入ってんのか分からないスリル。掘り出し物に出会えるかもしれないロマン。堪らないだろ?」

それはそれは。楽しそうで結構。

「…で?」

「ご覧の通り、キノコのクッションが入ってた」

やっぱりガラクタじゃないかよ。

だから。言わんこっちゃない。

あれ系の福袋は大方地雷だって、16年の人生で学ばなかったのかよ。

「うんざりする馬鹿だな、あんたは…」

「んなことねぇよ!キノコ好きな人なら、きっと大歓喜だぜ?」

「へぇ?じゃあ雛堂は、福袋の中からそのキノコクッションコレクションが出てきて、喜んだのかよ?」

「全然!」

開き直った良い笑顔で言いやがる。

やっぱりガラクタ。

「大体、詐欺だろあんなん。お楽しみ福袋、って書いてあったじゃん。何で趣味の悪いキノコのクッションしか入ってねぇんだよ!」

そして、今更になって逆ギレ。

雛堂のように、騙されてこの福袋を買ってしまった人は、皆そう思ってるだろうな。

これじゃあお楽しみ福袋と言うより…。

…キノコクッションの詰め合わせだ。

「完全に、売れ残りの詰め合わせを掴まされましたね」 

と、呆れ返った乙無。

うん。俺もそう思う。

だからお楽しみ系の福袋は危険なんだよ。そりゃたまには良いもの入ってるけど、売れ残りも多いからな。

ご覧の通り、今の雛堂みたいに、袋を開けて悶絶することになる。

あー。俺も買わなくて良かった…。

「で、それがいくらしたんですか?」

乙無が尋ねた。

そういや、値段を聞いてなかったな。

500円でも要らねぇ!と思うけど。

さすがにワンコインじゃ無理だよな。1000円とか…?

しかし、このキノコクッションの盛り合わせは、そんなものじゃなかった。

「…まん、えん」

福袋の値段を聞かれて、表情を固く、暗くした雛堂が、ボソッ、と答えた。

何だって?

「え?何て?聞こえなかった」

「…だ、か、ら。一万円!」

投げ捨てるように言ったその金額に、びっくり仰天。

マジかよ。これで一万円?

「ばっ…!こんなものに一万円も払ったのか?馬鹿かよ!」

「知らんわ!自分だって中身知らなかったんだから!こんなもんが入ってるって分かってたら買ってねーよ!」

これには、半泣きで雛堂も逆ギレ。

そりゃ半泣きにもなるわ。一万円も出して、こんなガラクタ掴まされたら。

でも、買う方が悪いからな。どう考えても。

一万円、ドブに捨てたようなもんじゃん。勿体なっ…!

その一万円があったら…と、色々考えてしまうよな。

しかし、失ったものはもう取り返しがつかない。
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