アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「ほら、これだよ」

俺は、さっき隠した紙袋の中身を…リアルなマイタケとポルチーニのクッションを、寿々花さんに見せた。

「どれどれ。悠理君の性癖は…。…!?」

これには、寿々花さんもびっくり。

何が性癖だよ。酷い誤解だ。

これで分かっただろう?そんな…男の子の趣味を隠してる訳じゃないんだってこと。

「雛堂に押し付けられたんだよ。福袋で当たったんだって、これが…。で、俺と寿々花さんにって…」

「そんな…まさか…」

「…あ?」

寿々花さんは、見たことない顔で絶句していた。

「悠理君が…まさか、キノコで興奮する趣味だったなんて…!」

卒倒するかと思った。

ちょっと待て。まだ誤解が解けてない。

どころか、更にとんでもない恐ろしい誤解を生んでる気がする。

「世の中には色んな趣味があるけど…。そっか、悠理君は…キノコなのか…」

「あのな、寿々花さん。ちょっと待ってくれ。落ち着いて話をしよう。な?」

「…ううん、大丈夫。例えどんな趣味でも性癖でも、悠理君がとっても優しい人だって事実は変わらないもん」

「おい、こら。話を聞け。勝手に納得するな」

あんたは、同居人が謎のキノコ趣味でも納得するのか。そうなのか?

寛容にも程があるだろ。

それどころか。

「好きな人が好きなものなら、私も好きになることが出来るはずだよね。悠理君と一緒に、私もキノコについて勉強しよう」

「違う。嬉しいけど、その理解力は素晴らしいと思うけど、でもそういうことじゃない」

「水臭いなー、悠理君。もっと早く言ってくれたら良かったのに。大丈夫、世界には色んな家族の形があるんだもん。キノコで繋がる家族がいたって、」

「あってたまるか、そんな家族!」

マジで、もう、そろそろ、いい加減にしてくれよ。

頼む。頼むからちょっと落ち着いてくれ。

そして、俺の話を聞いてくれ。

「寿々花さん。落ち着いて、頭をリセットして、今一度俺の話を聞いてくれ」

「うん、聞くよ。悠理君の話なら、どんなお話でも、いつまででも、何でも聞くよ」

だから何でも話して、と広い心で受け入れてくれる寿々花さん。

俺は心の中で、雛堂に語りかけた。

…雛堂よ。

寿々花さんの誤解が解けなかったら、全部あんたのせいだからな。

その時は、これまで学校にゲーム機を持ってきていたことや、今日も不必要なものを学校に持ってきたことを、先生に密告してやるからな。
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