アンハッピー・ウエディング〜後編〜
円城寺が帰っていった、更にその二時間後。

「どう?味。美味い?」

「うん、おいしーよ」

そりゃ良かった。

雛堂が置いていった、大量のスイカ。

果たして、どう消費したものかと考えて。

レモン汁と砂糖を入れ、ミキサーを使ってスイカジュースにしてみた。

普通に食べても美味しかったけど、ジュースにしても美味しい。

炭酸水を入れてスイカソーダ…も悪くなかったが、寿々花さんが炭酸ジュース苦手だから、それはやめておいた。

「スイカをジュースにしちゃうなんて…。悠理君は凄いね。天才の発想だ」

スイカジュースに感動したのか、寿々花さんは目をキラキラと輝かせていた。

そんな大袈裟な。

「褒めてもらって嬉しいけど、俺の発想じゃなくて、ネットでレシピを調べて作っただけだからな」

先駆者は他にいる。俺はそれに習っただけ。

それなのに。

「悠理君のご飯は何でも美味しいもんね。ノーベル賞にお料理部門があったら、きっと受賞出来るよ」

…何言ってんのかね、この人は。

仮にノーベル料理賞があったとして、俺が受賞出来るなら、全国の主婦の皆さん全員が受賞してるよ。

本気で言ってんのか、冗談で言ってんのか…。

冗談に聞こえないからタチ悪いよな。

…そういえば。

「寿々花さん。明後日から、新学期始まるけど…」

「…そうだっけ?」

おい。大丈夫か?

いつまで夏休み気分なんだ。明日で終わりなんだぞ。

「そうだよ。また学校に行く毎日が始まるんだぞ。ちゃんと体調整えとけよ」

「そっかー。学校かー…夏休み楽しかったのに、もう終わっちゃうんだね」

「あぁ。残念だけどな」

「今年は色んな思い出が出来て、楽しかったな」

…それは良かった。

寿々花さんにとっては、充実した夏休みであったらしい。

そう思えるのは良いことだな。

最後の最後で、円城寺が訪ねてきたのが癪に障るな。

あいつさえ来なければ、良い気分で、良い思い出のまま夏休みを終えられたものを。

終わり良ければ全て良し、って言うが、逆に終わり悪ければ全て悪し、になってしまうからな。

「そういえば、二学期になったら…」

と、寿々花さんが言いかけたその時。

またしても、またしても我が家のインターホンが、ピンポーン、と鳴った。

…。

…またかよ。
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