アンハッピー・ウエディング〜後編〜
頭がクラっとするのを、必死に堪えた。

「…え?マジもん?本物なのか?」

子供の玩具…じゃないよな?

ほら、よくあるじゃん。なんちゃってなりきりスパイごっこの玩具みたいな。

あれを何処かで買ってきて、

「本物って何?偽物があるの?」

きょとん、と首を傾げる始末。

…マジ?じゃあ本当に本物なのか?

「何で…そんなもん持ってんの?つーか、それを何処に取り付けてたんだよ…!?」

「悠理君の背中。と、襟のところー」

「…」

…本気で言ってる?

もしかして、朝、俺の背中や襟元をぺたぺた触ってたのは…。

旧校舎にいる間も、常に何処かから不自然な視線を感じていたのも…。

…その、カメラと盗聴器のせいだったのか?

「…それ、その中に俺の今日一日のデータ?が入ってんの?」

「うん。この中にちっちゃいデータチップが入ってて、そこに記録されてるんだよー」

「ふーん…。ちょっと見せてくれるか?」

「うん、良いよー」

と言って、寿々花さんは黒い物体…小型カメラと盗聴器を手渡してくれた。

へー、本当にちっちゃい。

これじゃあ、仕掛けられても気づかないだろうな。

実際、俺も気づかなかったし。

嫌な視線を感じてはいたけど、まさか自分に盗聴器が仕掛けられてるとは思わないだろ?

「…で、これと似たようなものを、俺の部屋にも仕掛けてるって言ったよな?」

さっき、ちらっと言ってただろ。そんなこと。

ベッドに傍に…とか何とか。

「うん。同じものを仕掛けてあるよー。そっちも回収しなきゃ」

「それも見せて欲しいんだけど、案内してもらえるか?」

「良いよー」

と言う寿々花さんに釣れられて、俺の寝室に直行した。
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