アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「で、何処?」

「うーんとねー、ベッドの傍の…」

ごそごそ、と寿々花さんはベッドサイドのランプに手をかけた。

ランプの笠を、パコッと器用に外すと。

そこから出てきたよ。今俺の手の中にあるのと同じ、小さな黒いカメラが。

「あったあった。これだー」

ふーん。

「…いつの間に仕掛けたんだ?それ」

「ふぇ?昨日の夜。悠理君が寝てる時」

「俺、昨日の夜は部屋の鍵を閉めて寝たはずなんだけど…。開いてたか?」

「ううん、閉まってたよ?仕方ないから、マスターキーを探してきて開けたんだー」

「…」

「で、悠理君が寝てる間に仕掛けたの」

「…ふーん…」

「悠理君を起こしちゃうんじゃないかって、緊張したんだよー。えへへ。でも悠理君の寝顔、可愛かったなー」

…成程、そういうことね。

「…それ、そのカメラも貸してもらって良いか?」

「うん、良いよー」

お宝映像(?)のデータを回収出来て、ご満悦らしい寿々花さんは。

素直に、ランプに仕掛けていた小型カメラをこちらに手渡した。

成程ね。夜中中感じていた嫌な視線、あの悪夢の原因は、これだったのか。

成程、成程。よく分かりました。

…で、俺がやるべきことと言ったら。

盗聴器と小型カメラ2台から、小さなデータチップを取り出した。

へぇ。こんな小さなチップの中に、俺の今日一日のデータが入ってる訳ね。

凄いな。科学の進歩。

カメラって言ったら、普通のデジタルカメラしか知らないからさ。もっと大きいもんだと思ってた。

それが今時は、こんなに小さくなってるんだな。

これなら、相手に気づかれずに仕込むことも簡単だな。

…今の俺みたいに。

「…って、感心してる場合かっ!!」

俺はその小さな文明の利器、データチップを、バキッ、と粉々に握り潰してやった。
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