アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「きっついな、それ…。同情するよ」

「ね、そうでしょ?だから悠理君の活動記録を、」

「それは駄目だ」

「えー」

えー、じゃないんだっての。

それとこれとは話が違う。

レポート20枚の俺の活動記録って、それはもうレポートじゃない。

取り調べか何か?

「記録を取って、今週の週末でまとめて、来週提出する予定だったのに」

「来週が期限なのか?」

こくり、と頷く。

マジかよ。割とギリギリだな。

「この短期間で、いきなりレポート20枚って…。無理難題にも程があるだろ…」

「あ、ううん。課題自体は結構前に出てたんだよ」

何?

「じゃあ、何でもっと早くやらなかったんだ」

課題が出たら、例え提出期限に余裕があっても、出来るだけ早めにやっておくのが鉄則だろう。

提出期限間際に、別の科目で課題が出ることもあるし。

それに、前もって課題を終わらせておけば、期限間際で焦ることもないだろ?

今の寿々花さんみたいに。

「うん。だから早くに準備してたよ」

「え?でも…」

「悠理君に気づかれないような小さいカメラとか盗聴器とか、用意するのに時間かかっちゃって…」

「あー、はいはい。そういうことね」

寿々花さんはちゃんと、課題が出てすぐに課題の準備に取り組んだ。

まずは手始めに、盗聴、盗撮機材の調達から始めた訳ね。

真面目なんだが、そうじゃないんだか。

「注文してからも、届くのに時間がかかっちゃって、こんなにギリギリになっちゃったんだー」

「…」

「これでも、とっても急いだんだよ」

えへん、と胸を張る寿々花さん。

全ッ然、何ッにも、胸を張るようなことではない。

むしろ恥じてくれ。そんな下らない研究テーマの為に、貴重な時間と金を費やしたことを。

寿々花さんの苦労と努力は、よく理解した。

寿々花さんも大変なんだな。

そりゃそうか。あの新校舎の教師の授業を毎日受けてたら。

きっと生物だけじゃなくて、他の科目でも、大変で面倒な課題がたくさん出るんだろう。

男子部の生徒はいつも、不平等に嘆いているが。

こんな面倒な課題が出されることはないから、その点では、その点だけは、女子部より恵まれていると言っても良いのかもしれない。

…その点だけはな。
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