アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…と言っても、そんなに悩んでる時間もないもんな。

今すぐに…簡単に決められそうなテーマ…。

「…えーと…」

何かないか。何か。

俺は部屋の中をぐるりと見渡し、ヒントになりそうなものがないかを探した。

何でも良いんだ。この際俺以外だったら、もう何でも良い。

考えてる時間も惜しいから、何でも良いから早く決めなくては。

しかし、そんなに都合良く、家の中に自由研究のテーマになりそうなものなんて、

と、思ったその時。

「あっ…」

俺の目に入ったのは、ソファの上に放り出していたクッション。

そう、昨日雛堂からもらったばかりの、ハズレ福袋のお裾分け。

マイタケのクッションである。

これだ。

指をぱちんと鳴らしたい気分だった。

残念ながら俺は不器用だから、指パッチン出来ないけど。

「あれだ、寿々花さん。あれを研究テーマにしよう」

「ふぇ?あれって?」

「あれだよ、ほら。キノコのクッション」

キノコ。菌類も生き物のうちに入る…のか?

入るだろ?入るってことにしてくれ頼むから。

植物みたいなもんだし。良いだろ。

「クッション…?クッションは生き物じゃないよ、悠理君」

ずっこけるかと思った。

「違う、逆。クッションじゃなくてキノコに着目してくれ。キノコの研究レポートを書くんだよ」

「あ、成程。そういうことかー」

言わなくても理解してくれよ、それくらい。

「どうだ?良いと思わないか」

「うん、良いよー。悠理君が一緒に手伝ってくれるなら、何でも良い」

良かった。

じゃ、テーマはこれで決まりだな。

ガラクタを押し付けてきやがって、雛堂の奴、と思ってたけど。

意外なところで役に立ったな。

世の中、何がどんなきっかけで、どんな風に繋がるか分からないもんだ。

ともあれ、今回ばかりは助かった。

これで、研究テーマには困らない。

…とはいえ、俺達はまだスタートラインに立っただけだ。

テーマが決まっただけじゃ、どうにもならない。

ここからこのテーマについて、レポートを20枚も書かなければならないのだから。

本当に大変なのは、ここからだ。
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