アンハッピー・ウエディング〜後編〜
すると雛堂は、よくぞ聞いてくれたとばかりにドヤ顔で。

「おう。あれな、星見の兄さんに言おうと思ってたんだよ」

この顔を見るところ、何か思いついたらしいな。

何だろうな。夏っぽいことって。

海やプールは、乙無が嫌だって言ってたけど…。

「何やるんだ?何処かに行くのか」

「おうよ。夏と言えばやっぱり…肝試しだろ?」

…。

…は?
 
俺と乙無は、互いに無言で顔を見合わせ。

横でたこ焼き(たこ無し)を食べている寿々花さんも、きょとんと首を傾げていた。

…にも、関わらず。

「やっぱり、夏と言えば肝試しだろ。一度くらいはやらないとな」

名案を思いついたとばかりに、ドヤ顔で語る雛堂。

…何をまたアホなことを…。当たり前のように。

「それなのに、さっきから星見の兄さんも乙無の兄さんも、何なら無月院の姉さんまでぽかーん顔で、自分は寂しいね」

「…あんたが変なこと言い出すからだろ?」

「変なこととは失敬な!普通だろ?肝試しくらい」

…普通、なのか?

自慢じゃないけど、人生で一度もやったことない。

世間一般的には、誰でも一度はやったことがあるものなのか?

「乙無…あんた、肝試しなんかやったことあるか?」

「ありませんね」

「寿々花さんは?」

「…きもためし?それって美味しいの?」

ないようだな。

雛堂、やっぱりあんたの方が少数派何じゃね。

あと寿々花さん、きもためしじゃなくて、肝試し、な。

食べ物じゃねーから。

すると、雛堂は呆れたように言った。

「何だよおめーら。全く、つまんねー人生送ってんな。生きてて楽しいか?」

ムカッ。

余計なお世話だっての。つまんねー人生で悪かったな。

「私は毎日楽しいよ。だって、悠理君が一緒にいてくれるから」

「あーはいはい。そういうノロケとかは間に合ってるんで」

何を言ってんだよ。

それよりも。

「肝試しって…。散々考えて、思いついたのがそれかよ」

「お?何だ何だ。ビビってんのか?星見の兄さん、意外と小心者だなー」

ムカッ。

煽ってんじゃねぇぞ。頭にお好みソースぶっかけるぞ。

ソースが勿体ないからやらねーけど。

「別にビビってねぇよ」

「じゃあ良いじゃん。やろうぜ」

「そうじゃなくて、何処でやるのかって話だよ」

この辺、肝試し出来そうなところなんてあるのか?
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