アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それは…まぁ。

「百聞は一見に如かず…って言うもんな…」

「でしょー?」

その理屈は理解出来る。

短い時間で乏しい文献を調べるよりも、実際に目で見て書いたレポートの方が、遥かに実りのある内容になるだろう。

でも…どうやって実物を見れば良い?

…スーパーでエリンギでも買ってこようか?

それとも、公園の木の根元を片っ端から確認して、野生のキノコを探すか?

どっちにしても、それで良いレポートが書けるとは思えないが…。

「具体的には…どんな方法を使うんだ?」

「そうだなー…。…うーん…。…あ、そうだ」

ん?

「前に、一緒に水族館に行ったでしょ?」

水族館?

…って、もしかして。

「深海魚水族館のことか…?」

「うん。面白いお魚さんがたくさんいたよねー」

面白いか?あれ。

未だにトラウマになりそうな、気色悪い生き物ばっかいたけど。

「今度は深海魚じゃなくて、あれの、キノコ水族館…じゃなくて、キノコ族館みたいなの、ないかな?」

何だと?

考えてみたこともなかったが…。

「…それを言うなら、キノコ博物館じゃね?」

「そうそう。そんな場所が近くにないかなー?」

いや、そんな都合良くある訳ねーだろ。

聞いたことあるか?キノコ博物館なんて。

「さすがに無理だろ…」

「世の中に絶対はないと思うよ?」

何?その自信。

まぁなんだ。あれだよ。

深海魚水族館だの、爬虫類の館だのが存在する世界だからな。

中には、キノコ博物館だってあってもおかしくないかもしれないけど…。

だからって、そんな都合良く…。

「…」

でも、寿々花さんは至って真剣なご様子。

…じゃあ、まぁ一応調べてみるか。

別にキノコ博物館じゃなくても…。植物園?みたいな場所があれば、そこにキノコも展示してあるかもしれないし。

調べるだけならタダだ。

俺はスマホを取り出して、ポチポチと調べ始めた。

えーと、あの施設の名前は確か…。

「『見聞広がるワールド』…『キノコ』…で検索して…」

「…どう?見つかった?」

いやいや。やっぱりそんなのある訳、

「…あったわ」

「わーい。やったー」

驚くなかれ。マジである。

検索画面のトップに、「見聞広がるワールド キノコ博物館ホームページ」ってのが出てきた。

嘘だろ。マジであるのかよ。

恐る恐る、ホームページをタップして開いてみた。

「へぇ…。すげぇ、この施設、先月開館したばっかりだってよ」

「わー。出来立てほやほやだね」

ホームページを見たところ。

『見聞広がるワールド、待望の新館オープン!皆様のご来館をお待ちしております』だってよ。

ホームページには、ありとあらゆるキノコの写真が掲載されていた。

すげー…。マジであった…。

キノコ博物館というだけあって、古今東西、たくさんの種類のキノコが展示してあるんだそうだ。

へぇー…。

しかも、まだ開館したばかり…。これは運命なのか?奇跡なのか?日頃の行いなのか?

とにかく凄い。今の俺達にとっては、喉から手が出るほどお誂え向きの施設である。
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