アンハッピー・ウエディング〜後編〜
さて、そんな訳で。

今年は誰からもバレンタインチョコをもらう予定がない、が為に。

自分で、バレンタインチョコレートを作ることになった。

チョコを自作するなんて、今年が初めてだな。

バレンタインは来週なので、今週末の土曜日にでも手作りチョコの材料を買って。

日曜日に作って、来週のバレンタインの日に渡す、ってことで良いよな。

で、問題はレシピを何処で調達するか、だけど…。





「…うーん…。見つからないな…」

その日の放課後、新校舎の図書館に向かった。

バレンタインチョコのレシピを探す為である。

ハロウィンの時、新校舎の図書館でレシピを探したからさ。

バレンタインのレシピも、ここで探そうと思ったんだが…。

…ない。

置いてない訳じゃないんだよ。この広い図書館で、バレンタインのレシピ本が所蔵されていない訳がない。

それなのに、俺が探しても一冊も見つからないのはどういうことか。

と、言うのも。

所蔵してあるバレンタインレシピ本、全部、既に他の生徒に借りられちゃってるんだよ。

以前、小花衣先輩に教えてもらったアドバイス通り、貸出カウンター前の特集コーナーを見に行くと。

案の定そこには、バレンタインフェアと言わんばかりに、バレンタインレシピ本コーナーが作られていた。

が、そこに置いてある本、ほぼ全部借りられてしまっていて。

肝心のチョコレシピ本は、一冊も残っていない。

バレンタイン本の特集コーナー残っているのは、チョコレートの歴史とか、カカオ豆の原産地に関する本とか。

確かにチョコレートに関する本はあるけど、レシピ本じゃないんだよな。

俺は別に、チョコの歴史を知りたい訳じゃないから。うん。

苦し紛れに、カウンターにいた図書委員に尋ねてみることにした。

「済みません、チョコレートのレシピ本はないですか」

「あ、はい。ちょっと待ってください」

すると図書委員さんは、親切にもパソコンで蔵書検索してくれた。

しかし、その表情は曇っていた。

「うーん、ごめんなさい。今の時期とても人気で…。全部貸出中になってるみたいです」

とのこと。

やっぱり無理か…。皆、考えることは同じってことだな。

レシピ本を借りたかったら、もっと早くに来るべきだった。

「良かったら、予約しておきましょうか?」

「あ、いえ…。大丈夫です。ありがとうございます」

今から予約しても、手元に届くのは多分、バレンタインが終わった頃だろう。

それじゃ意味がない。

…仕方ない。レシピ本を図書館で借りるのは諦めるしかない。

俺は、すごすごと図書館を後にした。

うーん。無駄足だったか…。
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