アンハッピー・ウエディング〜後編〜
図書館で借りられない…となると。
まぁ、やりようはある。一応。
ネットでバレンタインチョコのレシピを検索して、それを見ながら作る…とか。
それしかないよなぁ。
スマホの画面だと小さくて、作業しながらだと見にくいんだけど…。
レシピ本がないんだから、仕方ないだろう。
本屋さんに行けば置いてあると思うが、今年のバレンタインの為だけに、わざわざお金を出してレシピ本を買うのもな…と思うと。
躊躇してしまう訳だよ。貧乏性の俺はさ。
よし。ネットでレシピを調べて、それを紙に印刷して、レシピ本代わりにすれば良いや。
そう決めて、遅れ馳せながら帰宅。
「ただいまー。寿々花さん」
「…」
…ん?
…今日は静かだな。やけに。
最近の俺は、自宅の扉を開ける時に身構えるようになった。
すぐそこで寿々花さんが待機していて、扉を開けるなりびっくり箱、みたいな状況になることが何度かあったから。
しかし、今日は玄関に寿々花さんの姿はなかった。
それは良いんだけど、声をかけても返事が返ってこないのは、どういうことか。
いつもなら、俺が「ただいま」と言うと、「おかえりー」と迎えてくれるのだが。
別に、必ずしも迎えてくれる必要はないけど。
いつもあるものが、今日はない…となると。
…なんかちょっと寂しい。
不思議なもんだよな。ちょっと前まで、寿々花さんの出迎えなんてあってもなくてもどうでも良かったはずなのに。
ってか、あの人家にいるのか?
玄関のドア開いてたし、靴もあるから、家の中の何処かにはいると思うが…。
「…寿々花さん?いるのか?」
「…」
…居た。普通に。
リビングのソファに、ちょこんと座っていらっしゃる。
何やら、熱心に本を読んでいるよんだ。
成程、本に熱中するあまり、俺が帰ってきたことに気づいてないんだな。
意図的に俺を無視している訳じゃないようで、安心した。
まぁ、寿々花さんはそういう陰険なことをするタイプじゃないから。
何の本だか知らないけど、熱心に読んでるなら、邪魔しちゃ悪いよな。
気づくまで放って置こうと思って、俺は寿々花さんの前をスーッと通り過ぎて、キッチンに向かい。
さっきスーパーで買ってきた食材を、エコバッグから取り出した。
今日のサラダに使う為に買ってきたツナ缶を取り出した、その時。
「おっと…」
うっかり手が滑り、ツナ缶を取り落としてしまった。
音を立てて床に落ち、コロコロと転がるツナ缶。
缶詰だから、落としたからってそんなに慌てる必要はないのだが。
「ふぇっ!」
ツナ缶が床に落ちた時の音にびっくりした寿々花さんが、本を取り落としてびくっ、とした。
「あ、ごめん…」
折角熱中してたのに。
ごめん。驚かせるつもりはなかったんだが。
「あ、あれ…?悠理君…?」
「…」
その時初めて寿々花さんは、いつの間にか俺が帰宅していたことを理解したようだった。
びっくりした顔で、こちらを見る目が、「いつの間に?」と問い掛けていた。
いつの間に、と聞かれても…。
さっき、普通に帰ってきただけなんだが…。
まぁ、やりようはある。一応。
ネットでバレンタインチョコのレシピを検索して、それを見ながら作る…とか。
それしかないよなぁ。
スマホの画面だと小さくて、作業しながらだと見にくいんだけど…。
レシピ本がないんだから、仕方ないだろう。
本屋さんに行けば置いてあると思うが、今年のバレンタインの為だけに、わざわざお金を出してレシピ本を買うのもな…と思うと。
躊躇してしまう訳だよ。貧乏性の俺はさ。
よし。ネットでレシピを調べて、それを紙に印刷して、レシピ本代わりにすれば良いや。
そう決めて、遅れ馳せながら帰宅。
「ただいまー。寿々花さん」
「…」
…ん?
…今日は静かだな。やけに。
最近の俺は、自宅の扉を開ける時に身構えるようになった。
すぐそこで寿々花さんが待機していて、扉を開けるなりびっくり箱、みたいな状況になることが何度かあったから。
しかし、今日は玄関に寿々花さんの姿はなかった。
それは良いんだけど、声をかけても返事が返ってこないのは、どういうことか。
いつもなら、俺が「ただいま」と言うと、「おかえりー」と迎えてくれるのだが。
別に、必ずしも迎えてくれる必要はないけど。
いつもあるものが、今日はない…となると。
…なんかちょっと寂しい。
不思議なもんだよな。ちょっと前まで、寿々花さんの出迎えなんてあってもなくてもどうでも良かったはずなのに。
ってか、あの人家にいるのか?
玄関のドア開いてたし、靴もあるから、家の中の何処かにはいると思うが…。
「…寿々花さん?いるのか?」
「…」
…居た。普通に。
リビングのソファに、ちょこんと座っていらっしゃる。
何やら、熱心に本を読んでいるよんだ。
成程、本に熱中するあまり、俺が帰ってきたことに気づいてないんだな。
意図的に俺を無視している訳じゃないようで、安心した。
まぁ、寿々花さんはそういう陰険なことをするタイプじゃないから。
何の本だか知らないけど、熱心に読んでるなら、邪魔しちゃ悪いよな。
気づくまで放って置こうと思って、俺は寿々花さんの前をスーッと通り過ぎて、キッチンに向かい。
さっきスーパーで買ってきた食材を、エコバッグから取り出した。
今日のサラダに使う為に買ってきたツナ缶を取り出した、その時。
「おっと…」
うっかり手が滑り、ツナ缶を取り落としてしまった。
音を立てて床に落ち、コロコロと転がるツナ缶。
缶詰だから、落としたからってそんなに慌てる必要はないのだが。
「ふぇっ!」
ツナ缶が床に落ちた時の音にびっくりした寿々花さんが、本を取り落としてびくっ、とした。
「あ、ごめん…」
折角熱中してたのに。
ごめん。驚かせるつもりはなかったんだが。
「あ、あれ…?悠理君…?」
「…」
その時初めて寿々花さんは、いつの間にか俺が帰宅していたことを理解したようだった。
びっくりした顔で、こちらを見る目が、「いつの間に?」と問い掛けていた。
いつの間に、と聞かれても…。
さっき、普通に帰ってきただけなんだが…。